どの程度のう蝕であれば切削介入し、またどの程度のう蝕であれば再石灰化を期待するか、その判断は歯科医師個人の経験や技術に裏打ちされていることが多い。

しかし、日本歯科保存学会『う蝕治療ガイドライン第2版(2015)』によれば、永久歯の咬合面におけるhidden cariesや永久歯隣接面の初期う蝕を切削介入するかどうかの判断は、歯科医師間でのバラつきが多くあると指摘されている。

本記事では「切削の対象になるのはどの程度まで進行したう蝕か?」という疑問を、実際のう蝕治療ガイドラインを参照して確認したい。

う蝕治療ガイドラインが示した指針

日本歯科保存学会は『う蝕治療ガイドライン 第2版』のなかで以下の判断基準を推奨している。

以下の1)〜5)の所見が認められる場合は修復処置の対象となる。特に複数認められる場合にはただちに修復処置を行うことが望ましい(エビデンスレベル「V」/推奨の強さ「B」)。

  1. 歯面を清掃乾燥した状態で肉眼あるいは拡大鏡でう窩を認める
  2. 食片圧入や冷水痛などの自覚症状がある
  3. 審美障害の訴えがある
  4. エックス線写真で象牙質層の 1/3 を超える病変を認める
  5. う蝕リスクが高い

最後の「う蝕リスクが高い」というのは、具体的には身体障害や口腔乾燥症、修復処置が多数あるケース、義歯や矯正装置の装着、フッ化物配合歯磨剤の未使用、間食の摂取、唾液分泌量の低下、低いデンタルIQなどが該当する(※1)。

Eldertonは、以下のようなケースは修復処置を適応するべきだとしている(※2)。

  1. 歯冠部う蝕では象牙質へ達している場合
  2. う蝕によって歯髄症状が生じている、あるいはすぐに生じそうな場合
  3. 修復処置によって回復することのできる咬合・機能障害がある場合
  4. 審美的障害があり、修復処置で改善することができる場合
  5. 歯の欠損部への食片圧入やそれによる口臭の訴えがある場合
  6. 近接する歯周組織の健康状態を回復することができる場合
  7. 修復物がアレルギー反応を引き起こした場合
  8. 患者が過度な心理的ストレスのために修復処置を望む場合

これらの情報やその他複数のメタアナリシス、システマティックレビューの論文を参考にして、日本歯科保存学会は「エックス線写真で象牙質の外側 1/3 を超える場合であり、さらに推奨文中の5つの所見のうち、複数認められた場合」に切削介入すべきであるという立場を表明している。

もちろん上記の条件に該当した場合でも、歯髄保護と修復処置の容易性や患者への負担、治療後の満足感などにも配慮した総合的な判断が必要となってくる。

参考文献

  1. Kidd, EAM, Essentials of Dental Caries 3rd ed,P61, Oxford Univ Press(2005)
  2. Elderton RJ. Overtreatment with restorative dentistry : when to intervene? Int Dent J. 1993; 43: 17-24.