お盆が過ぎました。お盆が過ぎると大手予備校の全国模試が始まり、歯科医師国家試験の世界では本格的な受験シーズンに突入します。

9月から数えると2月上旬の国試本番まで、約5ケ月間あるのですが、9月までは時間がゆっくり流れるのに、9月に入ると急に時間の流れが速くなるんですよ。

ブログにも度々書いていますが、枝葉末節の知識を詰め込むのではなく、全体像を把握した勉強をしてください。骨格となる事項を理解し、ポイントをつかむ勉強を心掛けてください。

国試勉強の目標は合格することにありますよね。みんなが正答する問題をきちんと正答するための勉強をしないとダメなのです。

受験生の皆さんが思っているほど今の国試では細かい知識は問われていません。問題の背景にある事項は深かったりしますが、難しい知識を求めているわけではないのです。残念ながらクイズ的な問題が出題されることもありますが、そのような問題は合否にほとんど影響しません。

なお、ブログでも紹介しましたが、管理栄養士国家試験と看護師国家試験の問題は、基礎学力を試すうえで大変良い問題です。ブログに問題を掲載していますので、必ず取り組むようにしてください。

もくじ
  1. 臨床実地問題の研究
  2. 112回国試で要注意なところの紹介
  3. 臨床の「基本」をきちんと理解しよう

臨床実地問題の研究

今回は111回歯科国試で出題された問題を紹介して、問題の研究をしていきます!

この記事や私のブログ(歯科医師国家試験 臨床問題を熱く語るブログ)は受験生だけではなく、受験生のご両親、現役の歯科医師の先生方にも読まれているようですが、かなりリアルな問題が出題されていることがお分かり頂けることと思います。

111回歯科医師国家試験A49(111A49)

上顎右側犬歯と第二小臼歯を支台歯とするブリッジを製作することとした。同一模型で製作した装置の写真を別に示す。次回来院時に行う操作はどれか。2つ選べ。

  • a 支台歯形成
  • b 咬合面コア採得
  • c 軟化象牙質除去
  • d 暫間補綴装置仮着
  • e メタルフレーム試適
111回歯科医師国家試験A49(111A49)

思考過程

  1. 1枚目の画像→メタルコアが製作されている。
  2. 2枚目の画像→テンポラリーブリッジ(TEK
  3. メタルコアを装着→支台歯形成→TEK仮着という流れになるため、解答はa dとなる。

dentalkokushiからのコメント

この問題は難しい知識は全く聞かれていませんが、歯科臨床の基本を理解していないと解答できない問題です。

実はこの問題、普通に一般歯科臨床をしている歯科医師であれば、秒殺で解答できる問題なのです。が、なんと正答率は10%台だったと推測されています。

私が国試受験生から受けた質問で一番多かった内容は、メタルコア装着後の支台歯形成です。コアが既に支台歯形態になっていると誤解している方が多かったのですが、コアはおおよその形態であり、最終的な支台歯形態になっているわけではありません。歯科医師が支台歯形成を行う必要があるのです。

試験委員の先生方も基本的な問題を出題したつもりだったのに、あまりの低い正答率に驚愕したのではないかと思われます。

低い正答率になった原因としては①臨床実習でライターがきちんと説明していなかった、または②メタルコアを装着する症例を見たことがなかった、という点が考えられます。

112回国試でもこのような臨床の基本を問う問題は確実に出題されるでしょう。特に浪人生の方は臨床の基本を説明できない場合が多いです。細かい知識を覚える勉強ではなく、臨床の基本を理解する勉強をするようにしてください。

低い正答率だったため、削除や採点除外を期待した受験生も多かったようですが、これは臨床の基本中の基本を聞いている問題です。したがって、試験委員の先生方も削除や採点除外にしたくなかったのだと私は考えています。

なお、本問題は動画で詳細に解説していますので、是非ご覧になって頂ければと思います(本問題の解説は2分15秒くらいから始まります)。

111回歯科医師国家試験A63(111A63)

部分床義歯の支台装置を別に示す。エーカースクラスプと比較した本支台装置の特徴はどれか。2つ選べ。

  • a 目立ちにくい。
  • b 支持作用が強い。
  • c 受動性に優れる。
  • d 把持作用が強い。
  • e 維持力の再調整が容易である。
111回歯科医師国家試験A63(111A63)

思考過程

  1. 頬側はワイヤー、舌側は鋳造鉤である→コンビネーションクラスプと判断
  2. コンビネーションクラスプは頬側がワイヤーで製作されているため、審美性に優れ、調整しやすい。よって、解答はaeとなる。

dentalkokushiからのコメント

この問題も一般歯科臨床をしている歯科医師であれば、秒殺で解答できる問題だと思います。正答率は60%程度と推測されており、合否に大きく影響した問題だったといえます。

コンビネーションクラスプは実際の臨床でしばしば用いられているクラスプです。受験生の中にはクラスプの細かい名前を覚える勉強をする方がいますが、そのような勉強をしても点数は取れません。

実際の臨床ではエーカースクラスプ、コンビネーションクラスプ、双子鉤、ワイヤークラスプの4種類の組み合わせで義歯を設計することがほとんどです。まずはこの4つのクラスプを考えるようにしましょう。

111回歯科医師国家試験A88(111A88)

15歳の女子。口唇が閉じにくいことを主訴として来院した。永久前歯萌出後、咬み合わせに大きな変化はないという。11歳時に初潮を迎えたという。初診時の顔面写真、口腔内写真及び口腔模型の写真を別に示す。セファロ分析の結果を図に示す。適切な治療目標はどれか。2つ選べ。(紙面の都合上画像は省略します)

  • a 上顎大臼歯の挺出
  • b 下顎前歯の唇側移動
  • c 上顎前歯の舌側傾斜
  • d 下顎骨の前方成長促進
  • e 下顎大臼歯の近心移動
111回歯科医師国家試験A88(111A88)

思考過程

この問題も臨床をしている歯科医師であれば誰もが知っている常識的な事項を聞いている問題でした。仮に矯正を専門としていなくても、成長が止まったかどうかを確認することは歯科臨床の常識といえます。

問題文に「15歳の女子。(中略)11歳に初潮を迎えた」とあります。したがって、顎骨の成長が止まったのではないかと考えることが求められていました。よって、治療方針として選択肢dを選ぶことは誤りとなります。

紙面の都合上、画像は省略していますが、画像を見なくても問題文の状況設定で選択肢dは誤りと判断できます。

ポリゴン表(セファロ分析)だけを見て、パターン的思考で解答した受験生がことごとくdを選択していました。正答率は40%弱だったと推測されています。

歯科医師国家試験受験界(?)には矯正をパターンで教える不思議な人がいるようで、その影響を受けた浪人生の多くが間違った問題でした。

dentalkokushiからのコメント

矯正を専門としない場合でも、歯並びに関する相談を受けることはとても多いです。したがって、歯科医師であるならば、一定レベル以上の知識は身につけておく必要があります。

「パターン的な思考は通用しない!真面目に勉強してください!」という試験委員からの強いメッセージのように思われます。111回国試を象徴する問題だったと言っても過言ではないでしょう。

112回国試で要注意なところの紹介

介護保険の利用者負担金

20188月から一部の利用者で、利用者負担金の割合が3割になります(所得によって決まる)。したがって、1割負担・2割負担・3割負担と3つのバリエーションが存在することになります。

PT-INR

PT-INRは各方面で予想されながら、なかなか出ません(笑)。ワルファリンのモニタリングの指標として臨床現場で定着しており、内科主治医への照会状でもしばしば登場する値です。ワルファリンの作用機序(ビタミンK拮抗薬ですね)から、歯科臨床とPT―INRの関係について、きちんと説明できるようにしておきましょう。

今の国試ではプロセスが聞かれることがとても多いです。わけもわからず暗記する勉強は厳禁です。

酸素解離曲線の意味

酸素解離曲線は生理学、麻酔学と関係しますが、近年の国試で出題されていません。意味をしっかり理解して説明できるようにしておきましょう。

臨床の「基本」をきちんと理解しよう

今回は111回国試の臨床問題を紹介しましたが、ここからわかることは、臨床的に常識的な事項が聞かれており、決して難しいことは聞かれていないということです。

基本的な事項をきちんと理解し、説明できること。そして、結論だけではなくプロセスも理解することが重要なのです。

きちんとした地道な勉強こそが重要であり、くだらない語呂合わせやくだらないパターン等を覚える勉強は役に立たないのです。勉強方法を間違うとあっという間に数年経過してしまいます。

歯科医師国家試験は大きく変貌しているのですから、講師の質や講義の質にも見極めが必要な時代です。歯科医師国家試験は高度な試験です。誰もが教えることができるわけではないように思います。臨床経験がきちんとあり、論理的に理由もしっかり教えてくれる先生に習うべきですね。

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