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AI(人工知能)とは、人工的に作られた人間のような知能のことをいう。つまりAIには、自ら考える力が備わっている。機械学習やディープラーニングで、人間がプログラムによる指示を与えなくても、自発的に賢くなっていくのだ。

これからの時代、AIが多くの仕事を担うようになる。2030年には汎用型人工知能が開発され、人間の仕事を置き換えていく。

先月、講談社が運営しているビジネスマン向けのメディア「現代ビジネス」に、以下の記事が公開された。現在の仕事の8割はAIに置き換わり、生活が送れなくなる職業が出てくる、という趣旨の記事だ。

> これから給料が「下がる仕事」「上がる仕事」全210職種を公開(URL

同記事では給料が「上がる仕事」「下がる仕事」がランキング形式で紹介されており、歯科医師が「給料が下がる仕事」第1位に堂々とランクインしている。あまりにいい加減な記事だったので、自分なりに検討してみたい。

医療界は真っ先にAIに置き換わる?

現代ビジネスの取材に対し、エコノミストの中原圭介氏は「真っ先に仕事を奪われるターゲットになるのは医療界だ」と警告する。診断や治療計画の立案だけでなく、精密な手術をこなす医師ロボットも開発されることから、医師、歯科医師、獣医師の仕事が消滅する、らしい。

特に歯科医師は、現在の月給64万3211円から、72.8%ダウンの17万5263円しか稼げなくなるという。以下、その理由として書かれていたものを引用しよう。

治療、手術を実施するAI搭載ロボットに仕事を奪われる。歯科診療所数は全国6万超とすでに供給過剰状態。多くが淘汰必至

歯科医師の仕事が、診断から治療までAIやロボットに置き換わる未来が、すぐそこまで来ていると同記事は主張している。

AI、歯は削れるのに調理はできない

一方、給料が「上がる仕事」もある。給料が「上がる仕事」第2位には、病院の調理員がランクインしている。その理由は、以下だ。

これからは病気を治すよりも防ぐ予防医療が重要で、病院の役割もそこが期待されるようになる。その点、老人特有の病気を防ぐための個々人の日々の食生活から、誤嚥性肺炎のリスクまでを考慮した食事を作るには、高度な知識が必要になってくる。病院調理員や病院の栄養士がそのプロフェッショナルとして活躍する時代が来る

これからは予防医療が重要で、栄養や誤嚥性肺炎のリスクを考慮した食事作りが必要である。ここまではわかる。しかし、なぜこれがAIで代替されないと思うのだろうか。

AIは、精密な窩洞形成を行い、患者さんの状態に合わせた補綴物を設計・製作することができるのに、誤嚥性肺炎のリスクを考慮した食事作りはできないのだろうか。というか、献立作りや調理は歯科治療よりも早い段階でAIが代替しそうな領域である。

歯科助手は「給料が上がる仕事」第4位

同記事のランキングでは、歯科助手が給料が「上がる仕事」第4位に位置づけられ、14万4446円から23万3625円に伸びている。歯科医師の月給は17万5263円になるそうだから、歯科医師になるよりも歯科助手になった方がだいぶ稼げる。その理由はこうだ。

歯科医師はロボット化するが、診療所の現場作業はなくならない。ロボット補助という担務も増えて、低賃金では雇えなくなる

寝ぼけて書いているなら仕方がないのかもしれないが、なんていい加減な分析だろうか。

歯科医院の管理者は医療法上、あくまで歯科医師である。すべての歯科治療がAIで代替されたとしても、それを使うのは歯科助手ではないと考えるのが妥当だ。

AIがそこまで職業の構図を塗り替えるならば、現在の職業の枠組みのまま未来を語ること自体が、ナンセンスなのではなかろうか。

なぜ「AI vs 人間」の対立図式にしてしまうのか

「AI vs 人間」という二項対立の図式は、古典的だがキャッチーである。最近のビジネス誌は「AI時代に無くなる30の仕事」「衝撃!10年後には○○の仕事は無くなる」といった論調が目立ち、なぜか「AIと人間が対立する」という前提で話が進められている。

「人工知能」という用語には、私たち人間が持つ知能と対立するようなイメージが付きまとう。だがそもそも、AIは人間の生活や社会をより豊かに、効率的にしてくれるものだ。

例えば歯科診療において、パノラマ画像を撮影したら自動で病変部が検出されたり、その人個人のパーソナリティに合わせて治療計画が立案されたり、といったことがAIによって実現されてくるだろう。

そうすれば、歯科医師の仕事は無くなるどころか、より本質的な治療やスキルを活かす部分にフォーカスできるようになり、生産性は向上するに違いない。

不安ばかり煽ってPVを稼ぐのではなく、もっと建設的な未来の話をすべきではないだろうか。

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