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歯科医療の現場では、歯科衛生士の人材不足が叫ばれている。新卒歯科衛生士の求人倍率は20倍を超えており、歯科衛生士を思うように採用できない歯科医院は増えている。

そんな現場の叫びとは裏腹に、歯科衛生士を養成する学校は入学者数の減少に頭を悩ませる。さらに入学者のうち1割以上が卒業までに脱落するなど、教育・実習のあり方も問われつつある。

歯科衛生士の養成・教育は、これからどうなっていくのか。一般社団法人全国歯科衛生士教育協議会が各歯科衛生士養成校を対象に実施したアンケート結果に基づいて、今後を予測する。

都歯科医師会附属歯科衛生士校が学生募集を停止

2018年8月31日、公益財団法人東京都歯科医師会は、運営していた東京都歯科医師会附属歯科衛生士専門学校(東京都千代田区)の2019年度の学生募集を停止すると発表した。

同校は、1988年に歯科衛生士養成校として開校。2007年に3年制に移行した後も、多彩な実習先や就職率の高さといった特色で多くの優秀な歯科衛生士を養成してきた歴史がある。

しかし近年は18歳人口の減少や四年制大学への志向が強まり、東京・神田にある校舎・設備の老朽化も深刻な課題となっていた。

東京都歯科医師会は同校の存続について議論を重ねてきたが、来年度の学生募集を停止せざるを得なくなった形だ。

歯科衛生士校は全国に164校、4年制大学が増加

2018年4月現在、全国の歯科衛生士養成機関は164校ある。その内訳は、4年制の大学が11校、短期大学が14校、専門学校が139校であり、多くを専門学校が占める。

近年は専門学校ではなく大学・短期大学が増加する傾向にあり、明海大学も2019年春に保健医療学部口腔保健学科(4年制の歯科衛生士養成課程)を開設するなど、口腔保健のスペシャリストを養成する動きが活発になってきている。

入学定員は過去最高、しかし入学定員充足率は低下

2018年度、現場での歯科衛生士不足が後押しする形で、歯科衛生士校の入学定員は220名増、過去最高の9055名となった。

ところが4月に実際に入学した学生の数は7570名にとどまり、昨年度よりも入学定員が増えたにも関わらず入学者数は293名減少した。

入学定員の充足率は、2013年には97.1%だった。しかし翌2014年からは減少傾向となり、2018年の入学定員充足率は83.6%にまで低下した。

全ての歯科衛生士校のうち入学定員が充足しなかった学校は59.9%で、2013年の35.8%から大幅に増えている。現場の人手不足感との乖離が、ますます深刻になってきそうだ。

「就職できない」心配はほぼ無し

歯科衛生士校を卒業し、歯科衛生士国家試験に合格すれば、就職できないという心配はほぼ無用である。2018年3月の卒業者である6975名のうち、就職した歯科衛生士は6481名、就職率は92.9%であった。

新規参入の歯科衛生士6975名に対する求人件数は85983件、求人は136418名と多く、就職者に対する求人倍率は21.0倍と過去最高を記録している。

また、就職しなかった7.1%の卒業生についても、その内訳は進学が最も多く、次いで結婚・出産・育児と続く。「就職したいけど就職できなかった」という学生はほとんど居ないと言っても良いだろう。

見えにくい「脱落者」の闇

歯科衛生士国家試験の合格率は96.1%(2018年3月)と高く、今後もこの傾向は続いていくと考えられている。就職率も高いのだから、歯科衛生士校に入学すれば就職まで安泰だ、と言いたいところだが、実はそうでもない。

2014年〜2015年度に歯科衛生士校に入学した学生の卒業までの動向を調査したところ、脱落者の割合は10.8%であった。脱落者とは端的に言うと、卒業せずに辞めていった学生の割合である。

入学した学生のうち1割以上が、卒業に至っていないのである。脱落の理由は同アンケートでは公開されていないが、1Dニュースが独自に学生にヒヤリングをしたところ、実習先の歯科医院でのコミュニケーションや過密なカリキュラムなどが原因となっていそうだ。

変わりつつある歯科衛生士校の風景

人手不足を嘆く医療現場の声と、歯科衛生士の養成カリキュラムの改善に取り組む教育現場の声のあいだで、歯科衛生士校の風景も変化しつつある。

日本の歯科衛生士校に留学する外国人留学生の数はこれまで10名強だったが、2018年度では過去最多の24名まで増加している。その多くが中国人の留学生だ。

また、歯科衛生士を志す男子学生も増えつつある。2018年度に歯科衛生士校に在学している男子学生の数は42名と、調査開始以降初めて40名を上回った。

ちなみに男子学生を受け入れている養成校は78校で、全体の47.7%となっている。この数値は年々増加しており、近いうちに全体の半数を超えそうだ。

留学生や男子学生の増加は、4年制課程の増加と相まっていると考えられる。歯科疾患の予防や口腔衛生の向上を図る専門職種としての歯科衛生士のあり方は、教育によって再定義されつつあるのかもしれない。

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