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歯科医師であり、ラッパー。歯科の世界に身を置きながら、音楽でも一流だ。バンド時代の楽曲は、人気アニメ・NARUTOのエンディングテーマにも採用された。

異色の経歴を持つDr.COYASS、歯科医師・小安正洋という横顔にスポットライトを当てると、ストイックに良質な医療を追求し続ける、意外な素顔が見えてきた。

小安正洋(こやす・まさひろ)

歯科医師、博士(歯学)、ラッパー。昭和大学在学中の1999年に音楽活動を開始し、2002年にメジャーデビュー。2003年歯科医師免許取得後も音楽活動は続け、2006年「デブパレード(※1)」結成。2011年の解散後は、Bro.Hi(元SOUL'd OUT)率いるクリエイター集団 E.P.Oのメンバーとして活躍する傍ら、昭和大学歯学部歯科保存学美容歯科学講座兼任講師、日本歯科審美学会認定医。

「お前、ラップやってみろ」

ーー音楽活動を始めたきっかけは何だったんですか?

本格的に音楽を始めたのは、歯学部生の頃です。大学のキャンパスが山梨県にあったので、全然することがなかった。そこで、他の医療系学部の奴らと、バンドを組んだことがきっかけです。

当時は僕も、ドラムを少しかじったことがある程度。しかもバンド仲間にドラマーがいたので「お前、ラップやってみろ」と言われて。そこから独学でラップをやってきました。

ーー在学中にメジャーデビューもされています。

メジャーデビューは、歯学部6年生の時ですね。お酒に酔った勢いで、オーディション番組のASAYAN(※2)に応募したら通っちゃって。それがきっかけになって、m-floのVERBALさんとMIC BANDITZ(※3)としてメジャーデビューしました。

僕も歯学部の6年生だったので、歯科医師国家試験の1週間前にレコーディングに出たり、かなり大変でした。

歯科医師ラッパー(Dr.COYASS:小安正洋)

多様性の時代、いかにオリジナリティを出すか

ーー歯科医師になってからも、臨床に研究にラップと、多方面でご活躍されてますね。

昔は、医療は医療、音楽は音楽、と意識的にセパレートしていました。音楽をやる時は歯科医師であることを隠したり。

でも最近、両者を分ける必要はないんじゃないかと思っています。今は、どちらも融合しているような感覚ですね。もちろん、歯科医師であることが自分のベースにはある。だけど、ラッパーとしての自分もまた自分です。

ーーそれが先生のオリジナリティということですか。

僕の場合は、歯科という専門分野があったうえで、付加価値としてラップがある。それぞれの分野で100点を狙う戦い方はできないかもしれませんが、80点の分野が2つあることで、強力な自分のオリジナリティになる

今は歯科も多様性の時代です。いかに他の人と差別化できるか、オリジナルの武器を持つか。僕の場合、それがラップだった。歯科医療とラップ、両者が融合してきたことで、仕事も上手く回るようになってきた気がします。

歯科界に激震『歯痛くて』

ーー打首獄門同好会とのコラボ楽曲『歯痛くて feat.Dr.COYASS』は、歯科界に激震が走りました。

打首獄門同好会(※4)の会長である大澤敦史氏は、もともと友人でした。ある時彼がむし歯になって、僕が主治医になった。治療していくなかで、「なぜむし歯になるのか」「どう予防すれば良いのか」を説明して、ディスカッションを重ねていたら、『歯痛くて feat.Dr.COYASS』が生まれました

歯科関係者からのディスが来るかと思いましたけど、まったく来ませんでした。歯学部の学生や歯科医療者からも、「すごく理解しやすい」「そのまま外来に流せる」と好評でした(笑)。

ーー3月11日に武道館でのライブもされたんですよね。

打首獄門同好会の日本武道館でのワンマンライブに、客演として「歯痛くて feat.Dr.COYASS」で武道館のステージに立たせていただきました。友人であり、患者でもある打首獄門同好会を微力ながらサポートできたことは、担当医冥利に尽きる出来事でした。

また、9000人ものオーディエンスに歯の大事さをアピールできたことは嬉しかったです。「武道館デンタルクリニックへようこそ」というMCは、この場でしか言えませんでした。

打首獄門同好会・武道館ワンマンライブは大盛況に終わった(撮影:朝岡英輔)

MCバトル、思わぬ恩恵

ーー歯科医師として臨む臨床で「これだけは誰にも負けない」ことは何ですか?

患者さんとコミュニケーションを取って、ラポールを形成することは、意識せずにできていると自負しています。その患者対応の技術って、どこでできるようになったのかと思い返してみると、やっぱりMCバトル(※5)なんですよね(笑)。

もともとコミュニケーション能力に長けていたわけではありませんが、MCバトルって、言われたことに対して即興で返すわけです。MCバトルで返すのはディスりですけど、病院でなら最後は患者を笑顔で帰せる。

ーーMCバトル、私も出てみたいです。

みんなもっと、MCバトル出たほうが良いんじゃないかと思います。社会人限定のMCバトルなんかもあって、面白いですよ。

色々な職業の人が、それぞれの職業の制服や服装で、MCバトルに出る。僕だったら白衣で出ます。で、まず名刺交換するんです。初対面なので。で、次の瞬間にはディスり合いが始まる(笑)。

歯科医師の先生方は、あまり歯科業界の外にいる人とは、つるまない傾向にあると思うんです。歯科医師の友達って、だいたい歯科医師なんですよ。他の業種とのコラボという面でも、一度ぜひMCバトルには出てもらいたい。

変化に対応できる者だけが生き残る

ーー「異業種コラボ」のブーム、歯科も例外ではない気がします。

ダーウィンの進化論ではありませんが、変化に対応できる者だけが生き残るわけです。その時代によって価値観は変化していく。

歯科でも、補綴やインプラントが花形だった時代もあれば、保存修復に流れが来ている時代もある。重要なのは、そういった時代の変化に俊敏に対応できる力だと思います。

ーー変化に対応するためには、どうすれば良いと思いますか。

時代の変化に対応するためには、情報収集が重要です。情報収集の仕方は、何でも良い。TwitterやFacebookなどのSNSでも、ニュースでも。エビデンスのある情報をしっかりと吟味することが必要です。

そして収集した情報を活かして、時代の変化に対応することが、ものすごく重要な能力なんじゃないかと思いますね。

歯科医師ラッパー(Dr.COYASS:小安正洋)
※1 デブパレード:体重100kgオーバーのミュージシャンが集まって結成されたロックバンド。2006年結成、2008年メジャーデビュー。2011年、数名のメンバーの体重が100kgを下回り、解散。
※2 ASAYAN:テレビ東京系列のオーディション番組。小室哲哉やつんく♂などのプロデュースで、鈴木亜美やモーニング娘。、CHEMISTRYなどの数多くのアーティストを輩出した。
※3 MIC BANDITZ:m-floのVERBAL氏を中心として結成されたヒップホップグループ。デビューから独自のヒップホップの形を追求した。
※4 打首獄門同好会:生活密着型ラウドロックバンド。2004年結成。生活感溢れるユルい歌詞を特徴としている。
※5 MCバトル:フリースタイル(即興)で行われるラップバトルのこと。

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