いわゆる「歯医者予約サイト」は数多あるが、その最大手に「EPARK歯科」は君臨している。

EPARK歯科は気軽に歯医者の予約が取れるWebサービスで、全国68,872件ある歯科医院(※1)のうち、92%にあたる63,461件の歯科医院が掲載されている(2018年2月現在)。

このうち、EPARK歯科と有料で契約をしているのは全歯科医院のうち11.5%らしい(2017年5月現在)。これはIT系サービスの常識から見れば、ほとんど独占状態と言って差し支えない割合である。

「地域名+歯医者」でGoogle検索すると、必ず上位にはEPARK歯科のページが出てくることから、歯科医院の集客にとっては無視できない存在なのだろう。

そんな急成長を遂げるEPARK歯科のウラ側を、この記事では徹底解剖していく。題して「使ってはいけない、EPARK歯科」。そもそもこのサイト、適法であるとは言えない

EPARK歯科のビジネスモデル

EPARK歯科は、患者の送客ごとに料金が発生するというビジネスモデルを採用している。契約している全歯科医院に固有の電話番号を割り当て、そこに患者が電話をかけると、歯科医院に料金が請求される。

このビジネスモデルは、医療においては適法とは言えない。厚生労働省は「保険医療機関及び保険医療養担当規則(以下「療担規則)」の平成26年4月の改正で、保険医療機関における紹介料やキックバックに対して、直接的な規制を敷いた。

療担規則第二条の四の二の2(※2)には、「経済上の利益の提供による誘引の禁止」に関する規定がある。

保険医療機関は、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。

つまり、保険医療機関(=ほぼ全ての歯科医院)は、患者を送客してもらう代わりにお金を払ってはならない、ということだ。EPARK歯科は、療担規則のこの部分に違反している可能性がある。

EPARK歯科の名目は「システム利用料」

もちろん、EPARK歯科も療担規則を知らないわけではない。同規則を把握しながら、営業を続けている。彼らの言い分では、「予約1件につき」課金しているのではなく、あくまで「お問い合わせ1件につき」「システム利用料」として課金しているというのだ(※3)。

ただ、EPARK歯科の医院ページにある電話ボタンにはデカデカと「予約 <初診予約・診察申し込み>」と書かれているし、そもそもドメインが haisha-yoyaku.jp だし、これで「予約ではない」は常識的に考えて通用しないだろう。

EPARK歯科

百歩譲って、仮に「お問い合わせ1件あたりのシステム利用料」であったとしても、違法である可能性が高い。療担規則に違反することを避けるため、外形上は利益提供を患者紹介の対価として明示しないことも厚労省は想定しており、この点に関しても療担規則の解釈は明確になっている(※4)。

厚労省は「名目に関わらず、実質的に患者紹介の対価として経済上の利益が提供されていると判断される場合には、禁止行為に該当する」とし、患者紹介の対価として明示していない場合にも「社会通念上合理的な計算根拠があることが示される必要がある」という立場を明確にしている。

罰則は歯科医院に

以上で見てきたように、EPARK歯科は適法とは言えないサービスである。そして、ここが重要なポイントだが、療担規則に違反して罰則が課されるのは、EPARKではなく歯科医院だ。

療担規則は、保険医療機関を対象としている。つまり「歯科医院に患者を送ってマネタイズしてはならない」というEPARK側に向いた規定ではなく「お金を払って自分の歯科医院に患者を誘導してはならない」という歯科医院側に向いた規定である。

EPARK歯科を利用する歯科医院が悪い、というのが療担規則のロジックなのである。現状、患者を歯科医院に送客して利益を得るEPARK歯科を規制する法律はない。一方でEPARK歯科を利用し療担規則に違反した歯科医院には、保険医療機関の取り消しといった行政処分の対象となる可能性がある。

「使わない」という選択

EPARK歯科のようなサイトがこのまま利用され続けるのは、歯科業界にとって健全なことではない。患者は良い歯科医院を探せなくなるし、歯科医院は適法でない手段で患者を集めざるを得なくなる。1件の送客あたり3,000円という費用を支払った歯科医院のしわ寄せは、結局のところ患者にくる。

歯科業界にとって、こんな不都合なことはない。だが、市場が独占され、歯科医院の集客をEPARK歯科に頼らざるを得ない現状では、今すぐに辞めることはできないだろう。SEOやユーザーへのリーチの広さで勝てる見込みもない。

歯科業界が一丸となり、このようなサービスを「使わない」という選択肢を検討することで、歯科業界の未来を新しく書き直していくことができるのではないだろうか。

注:本記事は、EPARK歯科のビジネスモデルの適法性と契約歯科医院への影響について療担規則に基いて検討したものです。

参考文献・注

  1. 『医療施設動態調査(平成29年1月)』厚生労働省, 2017.
  2. 保険医医療機関及び保険医療養担当規則』2016.
  3. 営業担当者との電話により確認(2018年2月9日)
  4. 疑義解釈資料の送付について(その8)』厚生労働省保険局医療課事務連絡, 2016.