歯科医療においてアマルガムは、150年ほど前から使用されてきた歴史がある。耐久性や操作性が優れているため、長年臨床の現場で頻用されてきた。

しかし、アマルガムに含まれる水銀の、地球環境への影響や人体への健康被害に懸念が示されるようになったのは、30年くらい前だ。それ以降は徐々に使用頻度が減少し、今日の歯科診療ではほとんど用いられることはなくなった。

歯学部の実習でも、アマルガム充填の術式はもう教えられていない。歯科医師国家試験で、その除去方法がたまに出題されるくらいだ。

「アマルガム廃絶」が日本歯科医師会の基本姿勢

「我が国の水銀に関するマテリアルフロー(2010年度)」や環境省の調査結果では、歯科材料としての水銀は、その量は大きく減少しているものの、現在でも0.02トン製造・輸入・使用されている。

平成27年には「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」が制定され、アマルガムにも含まれる水銀による環境汚染を防止するため、水銀に関する行動指針が明確になった。

日本歯科医師会も、コンポジットレジンをはじめとする他の修復材料が充実しているという理由から、歯科用アマルガムの使用を廃絶する方針が基本姿勢だ。

世界的にも廃絶に向けた潮流

歯科用アマルガムの使用頻度が減少しているのは、日本だけではない。世界的に、アマルガム充填の廃絶に向けた潮流がある。スウェーデンやオランダ、デンマークなどの国にいたっては、歯科用アマルガムの使用や販売、輸入や製造を禁止にしている。

2013年には、日本政府が主導し「水銀に関する水俣条約」を全世界50カ国と採択した。今後も、歯科用アマルガム廃絶に向けた流れが止まることはないだろう。

アマルガムは人体に有害?

アマルガムは、口腔内に充填されている状態では化学的に安定しており、安全である。日本歯科医師会の立場としても、二次う蝕や不適合、審美性などの問題がない限り、原則として除去すべきものではないという方針である。

むしろ、積極的にアマルガムを除去する際に蒸気化した水銀を吸入してしまう方がリスクである。

アマルガムを除去する時の注意点

実際の臨床で遭遇するケースとして、患者の口腔内に充填されているアマルガムを除去しなければならなくなった場合、どのように対処するかという問題がある。

日本歯科保存学会は、口腔内に充填されている歯科用アマルガムを除去する際に、以下のような注意点を喚起している。

  • アマルガム除去の際には、できる限りアマルガムを切削することなく、手用器具を用いて一塊にして取り出す
  • 除去したアマルガムや、除去の際に生じる切削片は、下水道に流してはならない(下水道法・水質汚濁防止法)

患者だけでなく、自分や勤務しているスタッフの健康を守るためにも、歯科用アマルガムを除去する際には慎重にならなければならないのである。

参考文献

  1. 『水銀による環境の汚染の防止に関する法律』(PDF
  2. 日本歯科保存学会・アマルガムの使用に関する検討委員会『アマルガム、水銀の取り扱いに関する注意事項(一般臨床医向け)』(PDF
  3. 経済産業省『製品製造等禁止の水銀含有基準及び開始時期について』(PDF
  4. 日本歯科医師会『歯科用アマルガムの使用に関する見解』2013(PDF