前回の記事では、医療の効率性をいかにして測定するか、どのような治療が効率がよいと言えるのかといったことを解説した。今回の記事では、医療経済評価の手法として現在多く用いられている、費用最小化分析、費用効果分析、費用効用分析、費用便益分析について、それぞれ解説していこうと思う。

① 費用最小化分析

費用最小化分析は、全く同じ治療効果の治療Aと治療Bが並んでいた場合に、費用の少ない方を効率的であるとする分析法である。費用最小化分析は、あくまで治療効果がまったく等しいことが証明されている前提の分析であり、治療効果が異なる場合に最小の費用を選択することは、費用最小化分析とは言えない。

② 費用効果分析

費用効果分析は、疾患や治療方法に応じて指標を決め分析する方法である。その指標とは延命された期間だったり、血圧の値であったり、歯科であれば歯周ポケット深さであったりする。つまり、治療効果が異なる場合に、同一の尺度を用いて効果を定量的に評価し、それを費用と比較する分析法が、費用効果分析である。

③ 費用効用分析

費用効用分析では、質調整生存年(QALY:Quality Adjusted Life Year)といった指標を用いる。このQALYとは、従来の費用効果分析では想定していなかったQOLなどの概念を考慮することができることから、医療経済評価を社会保障制度に実際に反映している諸外国では多く用いられている分析法である。

QALYについてもう少し解説しておこう。QALYは生存年数とQOLをどちらも考慮する指標として、広く用いられるようになってきた。完全に健康な状態で1年間生活を送ったとして、そのときの価値の単位が「1QALY」である。それぞ基準に、2年間だと2QALY、また半年間入院してQOLが低下している状態だと0.8QALYなどとなる。この時のQOLは質問票などを用いて評価される。

④ 費用便益分析

最後に、費用便益分析という分析法を解説する。費用便益分析は、医療の文脈で用いられているというよりも、公共工事などで多用されている分析法だ。費用便益分析では、効果をすべて金銭に換算する点が特徴的である。つまり、治療に際してかかった費用と、治療をしたことにより得られる費用、すなわち賃金や労働損失などの経済効果を純粋に天秤にかけ、介入を取るか否かの意思決定をするという分析法である。

次回は、医療においてなぜ「市場の失敗」が生じるかということについて解説を行う。

参考文献

  1. 福田敬『医療経済評価手法の概要』保健医療科学, 2013.