歯科医師国家試験グループに参加

第111回歯科医師国家試験が、2018年2月3日(土)および4日(日)に行われる。歯科医師国家試験の本番まで、いよいよ残すところ10日あまりとなった。今回は4年に1度行われる出題基準の改訂後初の国家試験のため、出題傾向や合格者数に歯科業界から注目が集まっている。

前回の連載記事では、今後歯科医師国家試験の合格者数は減少していくという予測を行った。今回の記事では、歯科医師国家試験難化の背後に存在している「多浪生」の現実をお伝えしたい。

落ちれば落ちるほど受からない

興味深いデータがある。厚生労働省で行われている「歯科医師の需給問題に関するワーキンググループ」の資料では、受験可能回数(卒業経過年)が増加するほど合格率が低下する傾向にあることが示唆されている。

109回歯科医師国家試験では、受験可能回数が1回での合格率、すなわち新卒合格率は72.9%であった。

受験可能回数が2回、つまり1浪の場合は62.7%、2浪になると52.3%と合格率は減少していき、4浪になると合格できるのは4人に1人もいないという状態になる。

つまり、受からない受験生はとことん受からない。受かる受験生は現役で合格することが多いが、浪人を重ねれば重ねるほど受かりにくくなるのが現状なのだ。

残酷な現実

これは、ある残酷な結果を如実に表わしている。歯学部に入学し、6年間(恐らくこの場合はそれ以上)の年数を歯科医学を修めるために費やし、勉強・実習を乗り越えて学士(歯学)を取得してもなお、歯科医師として働くことができない学生が多くいるのだ。

現在の歯科医師国家試験は必修問題と一般問題、臨床実地問題に分かれており、必修問題の出来が少しでも悪いと一発で不合格になる。大学の試験では成績良好だった学生が国試で不合格になることがあるのはそのためである。

1浪は仕方がないにしても、遅くとも2浪目までに勝負を決めないと厳しい戦いになることがデータから容易に予想される。

絶望のなかに希望を見出せるか

我々は、実際に歯科医師国家試験の多浪生に取材を行った。Aさん(33歳)は、関東の私立歯科大学を卒業し、歯科医師国家試験を受験し続けている。

取材に対し「勉強しても思うように成績が伸びない」と口にする彼の表情からは、親や兄弟、元々同期だった友人からのプレッシャーと戦う苦痛が読み取れる。

Aさんは2年間の浪人を経て私立歯科大に入学し、8年間かけて卒業をした。学生時代の成績はそこまで悪くはなかったが、それぞれCBT(4年生)と卒業試験(6年生)で涙を飲んだ。Aさんが歯学部を卒業し、歯科医師国家試験の受験資格を得たのが2013年。初めて受験した107回国家試験は、合格基準の改訂もあいまって、大幅に合格者が削減された年だ。

そんなAさんは今年、5回目の歯科医師国家試験に挑む。我々が取材をしたのは12月中旬、勉強に疲れた顔でこう語ってくれた。

「現役で不合格だった時は、今年1年間を頑張れば受かるだろうという希望がありました。ただ、それは幻想だった。3浪目に突入したあたりから全く成績が上がらなくなって、今はむしろ下がる一方です。今回も出題基準の改訂があり、現役の受験生達に勝てる気がしません」

Aさんの実家は神奈川県で開業している歯科医院だ。弟はいるが、歯学部には進学しなかったため、事実上Aさんが跡継ぎである。外資系企業に勤務する2つ年の離れた弟は、既に社会人10年目に差し掛かろうとしている。

「弟や親戚からは、もう国家試験の話題は振られなくなりました。既に歯科医師になっている大学時代の友人からのプレッシャーもある。歯科医師である親の時代は国試も簡単だったから、親からの理解も得られない」とぼやく。

厚生労働省は早急な対策を

こうしたプレッシャーを感じているのは、Aさんだけではない。3浪以上の受験生の数は、109回歯科医師国家試験の時点で342人。Aさんは氷山の一角で、同じような境遇の多浪生は多い。

こうした現状を踏まえ、厚生労働省の歯科医師の需給問題に関するワーキンググループの資料では、多浪生への対応について、「早い時期に違う方向を考えさせることが必要」とし、「質の供給を保つために受験回数制限も合理性があれば行う」としている。

ある大学では実際に、歯学部入学後の低学年のうちに、歯科医師としての適正を欠く学生は他大学の受験を勧めるなどの対策を行っているそうだ。

歯科医師法第十一条で規定されている通り、歯科医師国家試験は受験資格を得るだけでも相当なコストがかかる。サラリーマンが働きながら受験できるような資格では当然ないのだ。

歯学部は実質的に歯科医師を養成するための専門学校のような様相を呈しており、歯学部を卒業しても歯科医師になれなければ、他の分野にはつぶしが効かない。

にも関わらず、合格することができない多浪生は多くいる。あまりにも残酷な現状である。厚生労働省を始めとする関係機関には、早めの対策が期待されるところである。

歯科医師国家試験グループに参加

参考文献

  1. 『歯科医師の需給問題に関する論点整理(案)』厚生労働省, 2016.
  2. 『歯科医師国家試験制度改善検討部会報告書』厚生労働省, 2016.
  3. 『歯科医師需給問題を取り巻く状況』厚生労働省, 2015.
  4. 『歯科医師需給問題の経緯と今後への見解』日本歯科医師会, 2014.