自費診療のインフォームド・コンセントは困難だ

あなたが歯科医療従事者ではなく患者さんの立場だったら、1本10万円もするオールセラミッククラウンにするか、より安価な値段で製作できるメタボンにするか、非常に悩むことだろう。それは、装着後の自分の姿がイメージできないからだ。メタボンではなくオールセラミッククラウンを選択した後の自分の口元を細部まで想像することができれば、もっと患者さんの意思決定は楽になるに違いない。

特に自費診療では、患者さんの高い審美的要求に答えることが必要であり、医師が持っている治療後のイメージと、患者さんが抱いている治療後のイメージが乖離していると、大変なことになる。医療訴訟にもつながりかねない。自費診療のインフォームド・コンセントは、かなりセンシティブな問題なのだ。

Kapanu AGは、患者さんの意思決定を支援する

スイス・チューリッヒのKapanu AGというベンチャー企業は、拡張現実(AR)の技術を用いて、その課題を解決しようとしている。クラウンの装着後、自分の口元はどういった仕上がりになるのか、タブレットの画面を通して確認できるソリューションだ。これでもう、ワックスアップをして患者さんの顔色を伺い、同意を得る必要はない

Kapanu AGなら、リアルタイムにクラウン装着後の患者さんの姿をタブレットに投影でき、反応を見ることができる

Kapau AGは、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(Eidgenössische Technische Hochschule Zürich:ETH)発のベンチャー。CEOのRoland Morzinger率いるチームは医療用の拡張現実システムを開発し、まずは歯科の領域で実際のプロダクトとして応用した。昨年の冬にケルンのインターナショナル・デンタルショーで発表された同システムは、発表後にIvoclar Vivadentに買収され、注目を浴びている。

Kapanu AGのプロモーション動画があるので、詳しくはそちらをご覧いただきたい。拡張現実(AR)を巧みに歯科領域に応用し、歯科疾患や審美性に悩む患者さんの意思決定の支援を実現した本システム、日本の歯科医院でも当たり前のように使われる日が来るのだろうか。