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歯科医療の現場では歯科衛生士の人手不足が叫ばれていますが、臨床からリタイアする衛生士は後を絶ちません。数年以内に半数近い衛生士が離職するとも言われており、歯科医院の人材不足は加速しています。

全国に多くのファンを持ち、自身でも『ぶっちゃけ K’s seminar』を主宰するなど精力的に活動する歯科衛生士・井上和さんは、「就職先の医院選びは、男を選ぶように選べ」「退職理由の9割は院長のせい」とおっしゃいます。

転職を考えている歯科衛生士、臨床から離れている歯科衛生士に、歯に衣着せぬぶっちゃけインタビューをお届けします(聞き手:本吉ひとみ)。

井上 和(いのうえ・かず)歯科衛生士歴37年、フリーランスとして30年に渡る臨床活動の傍ら、スタッフ教育や医院のサポート、講演・セミナーなどを精力的に行う。東京都歯科医師会附属歯科衛生士専門学校卒業。

人生を変えた桑田正博先生との出会い

ーー昔はどんな衛生士だったんですか。

歯科衛生士になってすぐの頃は、ただセメント練って、唾液を吸うだけ。言われたことだけをやる、それが仕事だと思っていました。

”患者さんが健康で幸福な人生になるよう支える” なんて言われても「は?なに大げさに言っちゃってるんですか」と。

仕事で楽しかったのは、終わってからの飲み会くらいでした。当時はその生活に不満もなく、変わりたいとも思っていなかったです。

ーーそれがどういうきっかけで変わっていったのでしょうか。

そんな毎日を過ごしていたなか、たまたま連れて行かれたセミナーで 歯科技工士の桑田正博先生 と出会いました。

桑田先生は、当時何も考えていなかった小娘の私に「医療人の歯科衛生士」として意見を求めてきました。”歯科衛生士として” どう考えるのかと。

天然歯と見間違えるほど精巧に作られた補綴物を見せていただいたとき、「この仕事をするには、患者教育ができていることが大前提。歯科衛生士がいなかったらこういう仕事はできない」と言われたんです。

ーーそう思うと、歯科衛生士の仕事が楽しくなりますね。

そのとき初めて「これが私の仕事なんだ」と思いました。ただセメント練って唾液を吸うだけではなく、もっとその先がある。歯科衛生士としての責任を感じて、やらなきゃ!と改心しました。

当時の私では何もできなかったので、そこから猛勉強。名ばかりの歯科衛生士ではなく、ちゃんとした歯科衛生士になろうと決意したんです。

就職先選びは、「男選び」だ!

ーー歯科衛生士の仕事をリタイアする人は、とても多いです。

出産、高齢、歯科以外への興味とか建前上はちゃんとした理由を並べますが、なんのかんの言ったって、院長に問題があるから辞めるんですよ。退職理由の9割が院長。

スタッフとの人間関係が上手くいかないのだって、院長がフォローしないから。あんまりひどい人がいるのなら、院長が諌めるなり何かしら対応はできるはずです。

出産したって、院内の環境が整っていれば育休という形で復職してくるので。私がサポートしている医院の1つは復職率が100%です。妊娠5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月とみなさん仕事を続けていて、子供が3人いることなんてざら。

少子高齢化だなんて言われてますが、環境が整っていれば、歯科衛生士だって3人でも産めるんです。

ーー良い院長ってどれぐらいいるんでしょうか。

100人中、5人ぐらいだと思います。60歳になってもここで働きたいと思える院長はそれぐらい。

「医院選びは男選び」ですから。結婚相手を選ぶとき、60歳になってもこの人と一緒にいたいと思える人を選びますよね。

それと同じで「60歳までこの医院で働いていたいか」という視点で考えて行動してみなさい、と。

ーー良い医院選びのポイントを教えてください。

院長自身がちゃんと挨拶ができて、アイコンタクトが取れて、人のためになりたいって気持ちがあること。医療人として必要な姿勢ですよね。じゃないと長く一緒に働きたいと思えないです。

院長も笑顔で、スタッフも笑顔で、患者さんも笑顔。それが基本で、さらに口腔内写真を撮っているとか、6点法の精密検査をしているとか、SRPを真面目にやっているところだと、なおよし。

形ばかりの診療だけやっていてもやりがいないですから。患者さんが健康で、幸せで、その患者さんの人生を支えるというのがゴール。そこに行くために何をしたらいいのかを考えている医院であることが重要です。

行動すればすべてが変わる

ーーこれから新しくチャレンジしたいことはありますか。

今が楽しくて仕方がないので、ずっと続いたらいいですね。私が桑田先生に教えてもらったように、私も後輩たちのやる気を引き出して、その先にいる患者さんが健康で幸福な人生を送れるようなサポートをしていきたいです。

私が教えている子たちにも「勉強がこんなに楽しいんだ」ってことを知らない子もいます。学生時代はその場しのぎの勉強をしていたような子が、私と関わっていく中で「勉強が楽しくてしょうがない」と変わっていく。

やらされていただけの勉強が、今では自らお金を払ってセミナーに行くようになるんです。先生との出会いはとても重要。「この先生の話は面白いから聴きに行こう」ってなるわけじゃないですか。面白くなかったら、休みを潰して聞きに行こうって思わないです。

ーー生まれ変わっても歯科衛生士になりたいですか。

そうですね。ただ、もし生まれ変わって他の仕事をしていたとしても、しみじみ「楽しい」と言っていると思います。どんな環境でも楽しいことに転換していけるので。

もし不満があるなら、解消するためにどうすればいいか考えて行動してみる。頑張ってみて、それでもダメなら潔く諦めて次にいく。

毎日ブーブー言ってたって、性格が悪くなるだけですからね。自分が納得できて、自分に合っている道を進んでいく。それだけです。

編集後記

男性よりも男らしい、魅力たっぷりの井上和さん。

衛生士やドクターなど関わっている方の特徴をよく掴み、それぞれの個性を最大限に引き出されている印象でした。

泣きながら電話をかけてくるスタッフの代わりとなって院長と戦い、時には場を読むこともあるようです。とっても人情深い先生です。

スパルタ教育ですが、和さまファンが続出しているのがよくわかります。お話を聞いていくうちに私も虜になってしまいました。

井上和さん、ありがとうございました。

歯科衛生士・本吉ひとみ

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