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(前回「生き残る歯医者、消える歯医者 〜3分でわかる歯科医院経営論 #4」の続き)

自己資本経営に近づけていくこと

さらに繰り返しになりますが、経営の基本は「継続」です。 そのために、毎月毎年現金の残る経営をすることが、経営者の仕事です。

貸借対照表の右側、「負債および純資産の部」が上下に分かれてあると思います。上側が負債、下側が純資産ですが、その間に線が引かれた時に、負債の割合の方が大きい経営を「他人資本経営」と呼びます。その逆はもちろん「自己資本経営」です。

どちらの経営の方が、良いと思いますか? 聞いた印象から言っても、おそらく誰が聞いても「自己資本経営」ですよね。

他人資本があることそのものが悪いわけでは全くありません。歯科クリニックは多くの場合、通常の創業融資額よりも大きな額を借り入れてスタートすることが多いと思います。

100%自己資本経営であることがいいことなのではなく、しっかりと借り入れを返済し、信用を積みながら現金の残る経営をして、他人資本経営を自己資本経営に近づけていくことが大切なことになります。

黒字倒産はこうして生まれる

ちなみにここでいう現金とは、現金損益という言葉を使っていますが、現金損益=(当期純利益+減価償却費)−(返済元本+保険の資産計上) の計算式で示されるもののことになります。損益計算書(P/L)の右下の当期純利益そのものではないことにご注意ください。

そこだけを見て、プラスだから、利益が出ているから、と安心すると、「儲かっているのに金がない」という状況になります。黒字倒産はそういうところから生まれます。

そこからまだ支払うもの、返すものがあるから、ということです。ですのでまず、この計算をしてみてください。分からなければ税理士に聞きながらでもよいと思います。

ただ、現金損益というのはとても新しい言葉で、税理士の中には「そんな言葉は会計用語にはない」とおっしゃる方もいるかもしれません。しかし、最近商標も取られた言葉で、今後は一般的になっていくと思います。

言葉そのものというよりはまず、この式によって、自分のところは現金が残る経営ができているかを確認していただければと思います。

目指すべき歯科医院経営の状態とは?

目指すべき経営としては以下です。

  • 現金損益毎月黒字経営
  • 自己資本経営

現金損益を黒字にしていけば、必然的に自己資本経営に近づきますので、この順番で意識をされてみてください。

式の左側を大きくするか、右側を小さくしていけば、現金損益の額は増えることになると思います。両方できることが一番良いわけなので、どこから取り組めるかをぜひ考えてみてください。

その上で、財務の問題は2つです。

  • 現金損益
  • 実態B/S(貸借対照表)

「実態の貸借対照表」とは?

耳慣れない言葉が出てきました。 実態の貸借対照表とは?と思われたでしょうか。

もちろん、偽物とか、改ざんされている、ということではないのですが、融資を受けやすくするため、銀行の信用格付けをよくするために、通信簿である決算書、特に貸借対照表の印象をよくすることはできるということです。

一部の会計事務所では、最初から実態で作成してくれるところもあるようです。

「悪の3勘定」を要チェック!

悪の3勘定と言いまして、貸借対照表の左側、資産の部にあってはならない勘定科目があります。

正確には、あることイコール悪なのではなく、説明ができて、納得されれば、問題ないケースもあるのでそこはよく中身を確認する必要があります。

問題の1つは、決算書の作成は全て税理士任せで、科目や中身について聞かれても分からない、ということにもあると思います。心当たりがある場合は、全てわかる必要はありませんが、肝のところだけでも押さえていただけたらと思います。

さて、悪の3勘定ですが、上記を踏まえて聞いていただくとして以下です。

  • ① 貸付金
  • ② 立替金
  • ③ 未収入金

資産の定義から言いますと、資産というのは「会社の持ち物」ですが、もっというと、「利益を生むために持つもの」と言えます。逆にいうと、利益を生まないものは資産ではないと言えるわけですね。

貸付金って、利益を生むでしょうか? そもそも、借り入れをしている場合、借りたお金を人に貸してはいけませんよね?迂回融資になります。

借りたお金そのものを貸しているわけではない、と言ったとしても、銀行はそう思ってくれません。立替金も一緒ですね。

つまりこれらの科目は、銀行は「ないもの」としてみます。すると当然、実態の資産状況は変わり、負債とのバランスも変わります。

その辺りを見ていかないと、ある日突然融資が受けられなくなる、というようなことも起こるかもしれません。

実際には、他にも気をつける資産科目はありますが、まずはこの「悪の3勘定」が貸借対照表にあるかどうかを確認してみてください。

本来ないとは思いますが、もしご自身の把握してないものや金額が大きい場合は、その中身の確認をされることをお勧めします。

目指すべき経営を志すことが何より重要

目指すべき経営の話をさせていただきましたが、当然ながら、まずは経営者、院長がしっかりとビジョンを定めて、「目指すべき経営」がはっきりしていることも大切です。

例えばですが、「税金を払わない」が目標だと、クリニックは良くなりません

しかし院長に言われてしまったら、クビを切られたくない税理士は同意してしまうことが多いと思います。「ちょっとくらい赤(赤字)がいいんです」と言ってしまいます。どうか、その言葉を鵜呑みにしないでください。

「年100万くらい赤字にしましょう」と税理士に言われたとします。確かにそれは「ちょい赤」かもしれません。

でももしそれを20年続けたら、仮に1000万円の資本金があったとしても、2000万円の繰越欠損金ですので、1000万円の債務超過です。いいわけがない、というのはお分かり頂けると思います。

それをするとしても、その後のリスク、可能性を考えて、ご判断いただきたいと思います。税金を払って、それでもきちんと現金の残る経営を目指していただけたらと思っています。

現状個人事業でされている場合は、ここでいう決算書はまだ作成されていないかもしれませんが、経営の考え方としては同じですし、今後開業を考えられることもあると思いますので、参考になればと思います。

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