難化の一途をたどる歯科医師国家試験。その背景には、歯科医師過剰問題を根拠とした厚生労働省による合格者数の調整がある。歯科医師国家試験はこれからどうなっていくのか、歯学生はどうしたらよいのか。本連載では「厚生労働省 VS 歯科大学」と題して、歯科医師国家試験を取り巻く諸問題を取り上げる。

歯科医師国家試験合格率の激減

近年、歯科医師国家試験には大きな変化が訪れている。メディアで近年取り沙汰されている歯科医師過剰問題を受けて、厚生労働省が合格者、すなわち新規参入歯科医師を大きく減少させているのだ。

2013年の106回歯科医師国家試験まで、合格率は71%程度以上を推移していた。しかし、107回の合格基準の改訂を経て、合格率は63%〜65%程度まで低下した。受験者数と合格率の推移を下のグラフに示す。
歯科医師国家試験合格率グラフ

歯科医師国家試験は相対評価

現状、歯科医師国家試験はその他の医療系国家試験とは異なり、絶対評価ではない。厚生労働省の思惑通り、合格者数で合否が左右される相対評価だ。

実際に出題された試験問題を見ても、年々難化していることがわかる。これは、どの国試予備校講師に聴いても同じ意見だ。昔はシンプルな設問が多くを占めていたが、現在はそういった問題は多くない。

背後に日本歯科医師会の思惑

厚生労働省がここまで新規参入歯科医師の削減に躍起になるのは、日本歯科医師会の影響も少なくないと推測される。日本歯科医師会は厚生労働省に対し、2014年10月に「歯科医師需供問題の経緯と今後への見解」という文書を提出している。

その文書の内容は、現在の歯科医師過剰問題を鑑み、新規参入歯科医師を制限せよ、というものだ。日本歯科医師会は今後の歯科医師の需供予測を行い、あるべき全体の歯科医師数は81,641人であるとし、毎年の新規参入歯科医師は1,500人が適切であると厚生労働省に訴えかけている。

日歯の文書を受け、厚労省の出方は

もちろん、厚生労働省もその文書に全面的に同意しているわけではないだろう。なにより、いきなり合格者を1,500人にしたら、歯科大学をはじめ国家試験受験生は混乱に陥ってしまう。

今後の歯科医師国家試験の合格者の動向について、国家試験の動向に詳しい予備校講師の1人はこう語る。「厚労省は、日本歯科医師会に全面同意というわけではないし、かといって各歯科大学に気を使う必要もない。両者の間を取る形で、だいたい1700人合格くらいに落ち着くのではないでしょうか」と。

その他の予備校講師に取材をしても、歯科医師国家試験の合格者数は今後も確実に減少を続けるという予測が大多数を占めている。109回歯科医師国家試験では合格者が2000人を割り、いよいよ厚生労働省 VS 歯科大学という構図が浮き彫りになってきた。今後も本連載では、歯科医師国家試験の動向に注目していきたい。