注)本記事は、2016年2月19日に別メディアで公開されていた記事を再編集・再掲したものです。

『歯は中枢だった』という書籍をご存知だろうか。トンデモ歯科医師と名高く、歯科業界では知る人ぞ知る、福岡のむらつ歯科クリニック元院長・村津和正氏の本である。

本書の内容もさることながら、この本は表紙からすごい。表紙には、次のような言葉が添えられている。

この封印された真実が社会の常識となるとき、人類の進化と幸福が約束されるだろう

歯は中枢である

ここでいう「封印された真実」とは、歯は中枢であるという主張だ。「歯が中枢」とは、一体どういうことなのか。村津氏が言うには歯は生命の中心点であり、中枢的機能を持つ命の上流である。

ヒトは神に似せて作られた高度な生命体であるのに、歯が悪いから本来の生命機能を発揮できていないという。人間がエスパー(ESP)的能力を発揮できていないのは歯のせいだ、とも。

このことに気が付いた村津氏は、これで不老長寿を実現、経済・社会問題も無くなり、ヒト生命体の進化、宇宙的人間の「神化」も可能になると確信したそうだ。

不適合金属が電波を受信する

村津氏の妄想は止まらない。歯は生命の中枢・命の上流であるから、そこにニッケルやコバルト、パラジウムなどの歯科材料を使って修復すると、身体の全生命活動が崩れてしまうという。さらに現代社会にはびこる「けがれ」も、この不適合金属が原因だとする。

村津氏は特にアマルガムを批判する。アマルガムは「電磁力病」の原因となる。不適合なアマルガムを放置していると、生体のバリアに穴を開けてしまい、体内に蓄積して遺伝子を破壊し、花粉症や癌、認知症、自殺、水虫を誘発したりしてしまうというから恐ろしい。さらにそういった不適合な金属がアンテナとなって電波を受信してしまったりする。

むらつゴールドと神合わせ

だからアマルガムをはじめとする不適合修復物は、ただちに口腔内から除去しなければならない。村津氏はコンポジットレジンも有害だからダメというから、何を使えばよいのか。

そんなときの「むらつゴールド」である。むらつゴールドは、地球上に存在する全ての元素から、聖書にヒントを得て開発した歯科材料で、主成分は金である。むらつゴールドは生体に波動を発射できるため、村津氏のいう「神合わせ」というフェーズに達する

「神合わせ」とは、村津氏にとって最良の咬合接触状態である。「むらつの咬合」とも呼ばれる。現状、神合わせに巡り会える確率は5000万分の1と言われているが、むらつゴールドを窩洞にあてがえば、いとも簡単に神合わせが実現できる。

神合わせで咀嚼をすると、絶えず幸せを感じるようになり、楽しい気分になれて、世界から飢餓や環境汚染がなくなる。さらに視力も回復し、パッチリ二重にもなれる。もちろん聴こえなかった耳も聴こえるようになる。

驚くのはまだ早い。神合わせを達成した人が、10m離れた場所にいる人を指差すだけで、差された人の指が開かなくなってしまうというのだ。この現象は「むらつ外気反射現象」と呼ばれている。このエネルギーは特に目から多く発射されているので、別に指を差さなくても、目を見るだけで良いらしい。

むらつ外気反射現象は、今後も世界中の優秀な研究者によって解明されていくだろうと村津氏は予測する。その先には、神なる世界・パラダイスが広がっており、やがて天上界へいざなわれるそうだ。

歯の本数には意味がある

歯は親知らずも含めると上下左右で8本ずつ、上下で16本ずつ、合計32本あるが、この数にも深い意味があると村津氏は指摘する。

歯の本数は、コンピュータの8ビット、16ビット、32ビットの数値と対応しているという。なんでこれが8の倍数かというと「8(ハ=歯)」というダジャレに由来しているというから驚きだ。

歯は血圧にも関係する

もっと言えば、歯は血圧とも直接関係しているそうだ。

なんと上顎犬歯と上下顎の第一小臼歯には血圧を上げる働きがあり、反対に上顎第二大臼歯は血圧を下げる働きがあるらしい。歯は中枢だから、自律神経に情報を発信して血圧を上げたり下げたりできるようだ。

奥深きドクターむらつの世界

この他にも、歯は独立した惑星系(ミクロコスモス)であるとか、歯を削ったり抜いたりすることは生命体権の侵害であり宇宙法に違反するだとか、色々と盛りだくさんでお腹いっぱいな本である。

あと本書には、誰が得するのかわからないがエピローグと称して村津氏の人生を振り返った年表が付録として付いている。

九州大学歯学部では空手道部で2回も優勝したこと、文武両道で充実した学生生活を送ったこと、大学院入試で答案を白紙で提出したこと、それで当然不合格になったことなどが詳細に書かれている。興味ある方は是非読んだ方がよい。

というわけで今後も、穢れたこの世界の救世主であるドクターむらつと、九州大学歯学部への熱い風評被害を見守っていきたい。

注)本記事は、2016年2月19日に別メディアで公開されていた記事を再編集・再掲したものです。