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本記事では「歯周治療をすることによってHbA1cの値は改善するのか?」という疑問について解説を行っていく。歯周病と糖尿病の相互的な関係については古くから指摘されている通りであり、糖尿病治療における歯周治療の効果や、歯周病の治療における糖尿病治療に関して、世界中で数多くの研究がなされてきた。

しかし、その研究結果は必ずしも一致したものとはいえず、前回のガイドラインでのメタアナリシスでも、統計的な有意差は認められなかった。

日本歯周病学会による『糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン第2版(2014)』によると、歯周治療と糖尿病、特にHbA1cの値との関係について、以下のように提言されている。

歯周治療によってHbA1cは統計学的に有意に0.36%改善するというランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタアナリシスがあるが、その効果に否定的な論文も存在する。ただし、その否定的な論文に対する反証も発表されているうえに、複数のメタアナリシスにおいて歯周治療による血糖コントロールの改善効果が支持されていることから、歯周治療が奏功する糖尿病患者群が存在すると考えられる。したがって糖尿病患者に対しては歯周治療が勧められる。

このように、歯周治療を行うことによって、糖尿病の血糖コントロールの指標であるHbA1cを改善させることができる患者群が存在することが示唆されている。すべての糖尿病患者の血糖コントロールに歯周治療が有用なわけではないが、糖尿病に対して歯周治療を行うことは、奏功する糖尿病患者郡が存在する以上は有意義だ、という意見が現在の日本歯周病学会の立場だ。

現在までで報告されている論文では、基準時の歯周病・糖尿病の重症度や歯周治療法などが異なるため、それによってHbA1cの改善度合いが変わってきていた可能性が高い。

メタアナリシスでは、歯周治療によってHbA1cの改善が認められてはいるものの、メタアナリシスに用いられた論文数や症例数は必ずしも十分でなく、先述のように重症度や治療方法も異なることから、どのような重症度の糖尿病患者に、どのような歯周治療の介入を行い、どれほど改善するか、といった条件を揃えた上での研究が待たれるところだ。

とは言えど、歯周治療によってHbA1cが改善する糖尿病患者郡が存在することは、事実であると言ってよいだろう。

「口の病気は万病のもと」というスローガンで数十年前から歯科疾患の予防・治療に歯科医療者はあたってきたが、現在それが実際のエビデンスとして示されつつある。今後も論文やガイドラインなどを注視し、日常の診療に役立てていきたいものである。

参考文献

  1. 日本歯周病学会『糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第2版』, 2014.

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