これまで有効な治療法が無かった疾患の治療が可能になるなど、失われた組織を取り戻す「再生医療」が脚光を浴びている。歯科医療も例外ではなく、特に歯周治療分野では盛んに再生医療の日常臨床への応用がされつつある。

連載『歯周組織再生治療の今・未来』第2回では、エナメルマトリックスデリバティブ(以下、EMD)を応用した術式と通常のフラップ手術、両者を比較した場合にどれほど歯周組織は改善されるかということについて解説していこう。

歯周組織再生治療のこれまで

歯周炎はプラーク中の細菌を原因とした慢性疾患であり、歯周組織の破壊をもたらす。EMDなどの歯周組織再生治療は、歯周炎によって破壊された歯周組織を再生することを目的として適用される。

前回の記事 では、現在臨床にて実施されている歯周組織再生治療の歴史的経緯や種類について解説を行った。1970年代にNymanらが遮蔽膜を用いた歯周組織の再生治療(現在のGTR法の土台となる治療)を編み出し、歯周組織再生治療への糸口をつかんだ。

現在ではGTR法、骨移植術、そして今回ご紹介するEMDといった歯周組織再生治療が臨床で応用されており、日夜研究が続けられている。

EMDが歯周組織を再生するメカニズム

EMDには、さまざまな分子量のアメロゲニンが含まれている。アメロゲニンはエナメル質に存在するタンパク質である。歯の発生においてエナメル質は30%のタンパク質を持つが、実にその90%がアメロゲニンだ。アメロゲニンは、エナメル質やセメント質の形成において重要な役割を担い、エナメル質の石灰化に伴い分解される。

アメロゲニンを歯周外科手術の際に歯根面に応用することにより、失われた歯周組織を再生する効果が期待されている。従来のフラップ手術と比較して、アメロゲニンを応用したEMDには付加的な効果が認められるのか、その評価の結果をまとめてみよう。

期待はできるが「何とも言えない」

日本歯周病学会は、フラップ手術と比較した場合、EMDによる有意な歯周組織改善は限定的と思われる場合もあり、適応症に関して慎重に考慮すべきであるという立場を、ガイドラインにて明確にしている。

十数本の研究を統合的に解析したメタアナリシスによれば、EMDの術式により、臨床的アタッチメントレベルの改善とプロービングポケットデプスの減少が、統計的に有意に認められたが、それぞれの研究において術式も違えば、患者の状態も異なり、評価指標もバラバラであった。

EMDによる歯周組織再生の効果を期待することはできるが、研究方法のバラつきがあるため、その結果の解釈には慎重になる必要がある

臨床的な期待を個別のケースで検討を

今後、更にEMDの臨床応用に関する大規模な研究が進み、日常的な臨床への応用も進んでいくことだろう。

現在の時点では、それぞれの症例において、EMDによって期待される臨床的アタッチメントレベルやプロービングポケットデプスの改善が、どれほど臨床的な意義をもたらすかを考えて実施する必要があるのかもしれない。

参考文献

  • 特定非営利活動法人 日本歯周病学会『歯周病患者における再生治療のガイドライン』2012.
  • A. R. Ten Cate『Ten Cate 口腔組織学』医歯薬出版, 2001.
  • 早川太郎, 須田立雄, 木崎治俊『口腔生化学』医歯薬出版, 2011.
  • Esposito M,Grusovin MG,Coulthard P,Worthington HV.Enamel matrix derivative(Emdogain R)for periodontal tissue regeneration in intrabony defects.Cochrane Database Syst Rev.2009 Oct 7;(4): CD003875.