日本社会の高齢化は加速している。内閣府の平成29年版高齢社会白書によれば、2016年10月現在の日本の人口は1億2693人で、そのなかの27.3%にあたる3459万人が高齢者だ。同調査では、2065年には高齢化率が38.4%に達し、国民の2.6人に1人が高齢者という社会になると予測されている。

高齢化が進み、また同時に高齢者の保有歯数の増加に伴って、高齢者に対する歯科治療の意味合いも変化していている。特に、高齢者に特有なう蝕である根面う蝕にいかに対処するかが、課題として叫ばれている。

根面う蝕の議論活発に

厚生労働省が5年に1度行っている歯科疾患実態調査のデータを見ても、高齢者のう蝕有病者率は上昇している。

根面う蝕は、歯冠部のエナメル質に生じるう蝕と比較しても無機質の含有量が少なく、かつ初期段階では実質欠損が少ない場合も多い。そのうえ、環状にう蝕が広がりやすいため、どの範囲まで切削介入するかの判断が困難である。

さらに、在宅医療や訪問診療といった治療環境が制限される場合など、切削介入が困難なシチュエーションも増えてきており、フッ化物を用いた再石灰化を根面う蝕に対して用いる議論が活発になされている。

根面う蝕への対応法

根面う蝕への対応としては、フッ化物の塗布による非切削での対応と、切削修復する場合の対応とがある。

今回の記事では、日本歯科保存学会による『う蝕治療ガイドライン 第2版』から、以下のクリニカル・クエスチョンについて解説しよう。

  1. 初期根面う蝕に対してフッ化物を用いた非侵襲的治療は有効か?
  2. 根面う蝕の修復処置にはコンポジットレジンとグラスアイオノマーセメントのどちらを使用するか?

フッ化物を用いた非侵襲的治療は有効?

日本歯科保存学会は、学会として根面う蝕治療の立場を示すうえで、17編の英語論文のシステマティックレビューを行った。

フッ化物配合歯磨剤と0.05% NaF(約 230ppmF)配合洗口剤を日常的に併用することにより、初期活動性根面う蝕を再石灰化させ、非活動性にすることが可能である。
また、1100ppmF以上のフッ化物配合歯磨剤の使用だけでも、表面の欠損の深さが0.5mm未満のう蝕であれば、再石灰化できる可能性がある。

これはつまり、こういうことだ。

欠損の浅い初期活動性根面う蝕の場合は、まずフッ化物を用いた非侵襲的治療を行って再石灰化を試み、う蝕を管理するよう推奨される。

日本歯科保存学会は、まだ初期段階の根面う蝕で、実質欠損も浅い場合には、いきなり切削修復を行うのではなく、まずはフッ化物を応用した非侵襲的治療を行い再石灰化を期待する、という立場をガイドラインで明確にしている。

CRとGICのどちらを使用する?

つぎに、実際に切削修復する場合はどうするか。コンポジットレジン修復を選択するか、それともグラスアイオノマーセメント修復を選択するか。

この判断、実は両者の臨床成績を直接比較した研究は少なく、エビデンスに基づく明確な判断基準はいまだに提示されていないのが現状だ。

もちろん、ご存知の通りそれぞれにメリットはある。コンポジットレジンには、グラスアイオノマーセメントに比べて脱落しにくい、辺縁適合性が良好である、といったメリットがある。一方でグラスアイオノマーセメントにも、酸塩基反応によって硬化することから、完全な防湿が困難な治療環境での修復処置に適するなどのメリットがある。

こういった点を考慮したうえで、日本歯科保存学会はこう提言している。

辺縁適合性や二次う蝕の発生の点で、根面う蝕に対するコンポジットレジン修復とグラスアイオノマーセメント修復の1年後までの臨床成績に、有意な差は認められない。

根面う蝕をコンポジットレジンで修復しても、グラスアイオノマーセメントで修復しても、そこまで臨床成績に違いは出ないということだ。

ガイドラインでは以下のように続けられる。

よって、接着システムの性能を十分に発揮させうる条件下ではコンポジットレジンを使用し、う蝕が歯肉縁下及び、防湿が困難な場合にはグラスアイオノマーセメントを使用するよう推奨される。

つまり、治療環境が整っている場合、もっと具体的に言えば、防湿がきっちりとできるような環境下では、コンポジットレジンによる修復を適応し、そうでない場合にはグラスアイオノマーセメントを適応する、という方針である。

参考文献

  1. 内閣府『平成29年版高齢社会白書』2017.
  2. 桃井保子『グラスアイオノマーセメント、コンポマー、コンポジットレジン修復を比較評価する』日歯評論, 2000.
  3. 千田彰『根面う蝕治療の現状と問題点』日歯評論, 2002.
  4. 日本歯科保存学会『う蝕治療ガイドライン 第2版』2015.