世界で最も高齢化率の高い我が国においては、急増する高齢者特有の疾患に対していかに対処するかがしばしば議論の的となる。それは、歯科領域においてももちろん例外ではない。社会の高齢化に伴い、高齢者に好発する根面う蝕への対応が議論されている。

根面う蝕に対して「サホライド®」に代表されるフッ化ジアンミン銀を塗布することで、う蝕の進行を抑制できるというエビデンスが出てきている。実際の臨床での遭遇機会が今後も増えると予測される根面う蝕に、フッ化ジアンミン銀は応用できるのか。

また、最近では中国の小児におけるランパントカリエスが問題になっている。そういった諸外国の環境においても、フッ化ジアンミン銀が担う役割は非常に大きいのではないだろうか。

本記事では、「いまこそ、フッ化ジアンミン銀に注目すべき2つの理由」と題して、日本歯科保存学会『う蝕治療ガイドライン 第2版」と他数本の論文より、そのエビデンスを解説をしていきたい。

フッ化ジアンミン銀の作用機序

フッ化ジアンミン銀は、初期う蝕の進行抑制や二次う蝕の抑制、象牙質知覚過敏症の抑制に有効である。代表的な商品は株式会社ビーランド・メディコーデンタルの「サホライド®」だろう。その作用機序は、銀によるタンパク固定、フッ化物による不溶性塩の生成により、象牙質細管を閉鎖し、う蝕の進行を抑制する、というものだ。

サホライド, フッ化ジアンミン銀

開発の背景には高度経済成長期

フッ化ジアンミン銀の塗布により、乳歯う蝕の進行が抑制されることは半世紀前から解明されている(※2)。解明された当時は小児のランパントカリエスが社会問題となっており、フッ化ジアンミン銀は救世主のような扱いだった。

その後も、フッ化ジアンミン銀によるう蝕の進行抑制の効果は、多くの臨床研究によってエビデンスが示されている(※3, 4)。

フッ化ジアンミン銀に注目すべき2つの理由

解明から半世紀、すでに我が国の社会は成熟し、小児のう蝕は減少した。それにつれて、フッ化ジアンミン銀を臨床で用いる機会は、急激に減少している。ご存知の通り、う蝕病変を黒変させるという審美上の問題もある。

それでは、なぜいま、フッ化ジアンミン銀に注目すべきなのか?

中国のランパントカリエス

フッ化ジアンミン銀のニーズはまだまだこれからも拡大する。日本がそうだったように、急激に経済発展を遂げた中国などの国では、小児のランパントカリエスが問題視されているのだ。経済成長にう蝕は付きもので、その治療法・予防法として、フッ化ジアンミン銀が用いられつつあるという。

根面う蝕への応用

さらに我が国においても、フッ化ジアンミン銀のニーズはまだ多い。高齢化による根面う蝕症例の絶対数の増加に伴い、根面う蝕に対するフッ化ジアンミン銀の応用が注目されており、実際に有用だとするエビデンスもある(※5)。処置の簡便さや費用対効果も含めての評価だ。

半世紀の時を経て、フッ化ジアンミン銀は再び脚光を浴びつつある。われわれ歯科医療者にとって、う蝕を無くすことは極めて重要なテーマであるが、小児に対しても高齢者でも、それがどんな国であったとしても、フッ化ジアンミン銀が担うう蝕予防の役割は大きいのかもしれない。

参考文献

  1. 日本歯科保存学会『う蝕治療ガイドライン 第2版』2015.
  2. 西野瑞穂『ふっ化アンモニア銀による乳歯齲蝕の進行抑制に関する研究』阪大歯誌, 1969.
  3. Yee R, Holmgren C, Mulder J『Efficacy of silver diamine fluoride for arresting caries treatment』J Dent Res, 2009.
  4. Liu BY, Lo EC, Chu CH『Randomized trial on fluorides and sealants for fissure caries prevention』J Dent Res, 2012.
  5. Gluzman R, Katz RV, Frey GJ『Prevention of root caries: a literature review of primary and secondary preventive agents』Spec Care Dentist, 2013.