歯科医師国家試験グループに参加

医療系国家資格には、医師や看護師、薬剤師やPT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)など、さまざまな職種がある。読者の方にとって歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士の国家試験は馴染みが深いと思うが、それ以外の医療系国家試験はまったく解いたことがないのではないだろうか。

ふと思い立って、歯科以外の医療系国家試験に近年出題された歯科・口腔外科の問題を解いてみた。全体的に、やはり高齢者に関連した問題が多く、特に口腔ケアの問題が多かった。医師国家試験には口腔外科の問題も相当数出題されていたが、それらは長文問題か画像問題だったので本記事では割愛した。

歯の解剖、成長・発育

まずは第108回医師国家試験から、乳歯について基本的なことが聞かれている設問を手始めに紹介しよう。

【医師国家試験:108G15】乳歯について正しいのはどれか。
a 32本である。
b 臼歯から生え始める。
c 5〜6歳で生え終わる。
d 生後6ヶ月〜8ヶ月から生え始める。
e 10歳ころから永久歯に生え変わり始める。

乳歯は生後8ヶ月頃から生え始め、3歳で乳歯列が完成する。合計で20本であり、萌出順序はA-B-D-C-Eであるから、臼歯よりも前歯が先行する。ちなみに永久歯に生え変わり始めるのは6歳頃である。よって正答はdである。

これと似たような問題で、第102回看護師国家試験の必修問題から乳歯の本数が出題されている。

【第102回看護師国家試験:午前7】乳歯がすべて生えそろったときの本数はどれか。
1. 16本
2. 20本
3. 24本
4. 28本

乳歯は20本であり、それ以上でも以下でもなく、解説のしようがない。歯の萌出に関連して、第109回医師国家試験でも出題がある。

【医師国家試験:109C4】6歳児の所見として正常なのはどれか。
a 身長90cm
b 大泉門開存
c 永久歯萌出
d 胸椎骨棘形成
e 大腿骨骨端線閉鎖

答えは火を見るより明らかで、6歳と言えば永久歯萌出開始である。第一大臼歯は「6歳臼歯」とも呼ばれる。下顎では中切歯の方が先行することが多い。また、これと関連している定型発達の問題で、同試験では、以下のような出題がなされている。

【医師国家試験:109E32】標準的な1歳6ヶ月児の成長・発達の所見で正しいのはどれか。2つ選べ。
a 生歯が12本
b 頭囲が胸囲より大
c 体重が出生時の6倍
d 身長が出生時の2倍
e パラシュート反射の存在

「生歯」という単語は歯科医師国家試験では聞き慣れないが、たぶん「生えた歯」を略しているんだと思う。答えはaとeとなっているが、1歳6ヶ月って16歯萌出だと思ってたんだけど12歯でよいのだろうか。

高齢者・口腔ケア

さて、他の医療系国家試験で出題数が群を抜いていた高齢者や口腔ケア関連の問題として、例えば以下のような出題があった。

【医師国家試験:108G26】高齢者の栄養管理について正しいのはどれか。
a 経管栄養剤の注入は仰臥位で行う。
b 口腔ケアは嚥下性肺炎の予防に有用である。
c 胃瘻からの経管栄養では誤嚥は起こらない。
d 経鼻胃管は胃瘻による経管栄養より不快感が少ない。
e 中心静脈栄養は経腸栄養に比較して感染症の合併が少ない。

口腔ケアで誤嚥性肺炎を予防できる。それ以上のことは聞かれていない。口腔ケアに関する問題は、看護師とか介護福祉士の国家試験で頻出なので、実際にはもっと問題数が多い。

【第102回看護師国家試験:午後37】口腔ケアの効果として正しいのはどれか。
1. プラークの形成
2. 唾液分泌の促進
3. 口腔内のpHの酸性化
4. バイオフィルムの形成

2以外はすべて悪いことなので、正答は容易である。続いて介護福祉士国家試験の口腔ケアの問題。

【第24回介護福祉士国家試験:47】ベッド上で全介助を要する利用者の口腔ケアの基本的留意点として、最も適切なものを一つ選びなさい。
1. 洗口剤を使用して、歯垢を除去する
2. 舌の汚れを取り除く
3. 義歯をつけたまま行う
4. 硬い毛の歯ブラシを使う
5. 仰臥位で行う

これは、消去法的に2を選べる。正答となっている「舌の汚れを取り除く」という選択肢は、歯科医師国家試験だと騙しに来ているみたいな表現だが、これが正答となっている。

口腔外科・麻酔

口腔外科は、基本的に医師国家試験でしか出題されていない。

【医師国家試験:109B52】口腔内の白苔に対する治療薬はどれか。
a ST合剤
b アシクロビル
c イソニアジド
d アムホテリシンB
e ペニシリン系抗菌薬

これは口腔カンジダ症に関する設問らしいが、歯科医師国家試験では「口腔内の白苔」というだけでは口腔カンジダ症と決めつけることはできない。が、選択肢から考えるに抗真菌薬であるアムホテリシンBが正答である。

【医師国家試験:109H15】急変患者に対する経口気管挿管について誤っているのはどれか。
a 口腔内吸引する
b 喉頭鏡は切歯を支えに用いる
c 挿管時に声門を確認する
d 挿管後は左右の側胸部で聴診する
e 胸部エックス線写真でチューブ位置を確認する

誤っているのはどれか問題なので、明らかな誤答肢であるbが選べる。喉頭鏡の挿入時には歯の破折のリスクがあるので、支えに用いることはできない。

公衆衛生・予防歯科

公衆衛生関連でも、医師国家試験で歯科に関する問題が出題されている。

【医師国家試験:108H10】健康日本21の目標のうち、中間評価の時点で目標値に達した項目はどれか。
a 未成年者の飲酒をなくす。
b 未成年者の喫煙をなくす。
c 男性の日常生活における歩数を増加させる。
d 中学生や高校生で朝食を欠食する人をなくす。
e 80歳で20本以上自分の歯を有する人の割合を増加させる。

医師国家試験なのに、なぜか歯の健康の目標値が正答になっている問題である。医師国家試験の仕組みはよく知らないけれど、たぶん必修問題である。公衆衛生関連では、保健師国家試験で以下のような問題が出題されている。

【第101回保健師国家試験:11】成人を対象とした歯科保健活動において最も優先されるのはどれか。
1.フッ化物塗布の推奨
2.口腔機能の訓練の指導
3.栄養状態の改善のための指導
4.歯間部清掃用器具の使用の推奨

少しピンと来ない問題だが、恐らく答えは4であろう。「成人」と言っているから、中年男性くらいをイメージすると解きやすい。続いて、看護師国家試験に以下のような面白い問題が出題されていた。

【第101回看護師国家試験:午前39】死後の処置で適切なのはどれか。
1. 身体に挿入されたチューブ類は抜かずにガーゼで包む。
2. 鼻腔には最初に青梅綿を詰め、次に脱脂綿を詰める。
3. 和式着物のひもは縦結びにする。
4. 義歯は外して保管する。

答えは3らしい。ちなみに死後は義歯を装着したままの方が顔が整いやすいとのことだった。次に、管理栄養士国家試験から予防歯科の設問である。

【第26回管理栄養士国家試験:12】歯科保健活動とその目的の組合せである。誤っているのはどれか。 1つ選べ。
1. 3歳児歯科健康診査ー不正咬合の予防
2. 禁煙ー永久歯喪失の予防
3. 甘味飲食物の過剰摂取の制限ーう歯の予防
4. フッ化物歯面塗布ー歯周病の予防
5. 介護予防事業ー口腔機能低下の予防

フッ化物を塗ったところで歯周病の予防にはならない。易問である。

言語聴覚士国家試験が解けない

かなり歯科の出題数が多かったのは、言語聴覚士の国家試験であった。言語聴覚士の国家試験問題は、なんというか、誤りの選択肢に優しさを感じない。あと、パラトグラムとか構音の問題なんかは、歯科国試レベルでは到底正答できない問題が多かった。

【第15回言語聴覚士国家試験:午後16】歯原性腫瘍の特徴でないのはどれか。
1. 良性腫瘍である。
2. 口腔軟組織に発生する。
3. 非上皮性腫瘍である。
4. 無痛性に発育する。
5. エックス線検査で発見される。

勉強していても、すごく解きにくい問題ではないだろうか。歯原性腫瘍には悪性エナメル上皮腫などの悪性腫瘍もあるから、1の「良性腫瘍である」はちょっと何が言いたいのかわからない。2の「口腔軟組織に発生する」も、この書き方だと軟組織に限局して発生するみたいな書き方だし、全然ピンと来ない。

3の「非上皮性腫瘍である」というのは、全くそんなことないので誤りである。答えはたぶん3だろうけど、他の選択肢が紛らわしいので、歯科国試で出題されたら削除になると思われる。同試験からは歯周病の問題も出題されていた。

【第15回言語聴覚士国家試験:午前17】歯周病について正しいのはどれか。
1. 歯槽骨骨髄の脂肪化
2. 口腔カンジダ菌の増殖
3. 口腔粘膜の上皮異形成
4. 歯髄の変性壊死
5. 歯の病的移動

「歯周病について正しいのは」というざっくりした問題文であるが、これも「2. 口腔カンジダ菌の増殖」がイヤな選択肢である。恐らく正解は「5. 歯の病的移動」だと思うけど、ちょっと自信がない。続いて歯の発生の問題。

【第13回言語聴覚士国家試験:午前17】歯根膜について誤っているのはどれか。
1. 歯胚の歯乳頭から発生する。
2. 線維性結合組織である。
3. シャーピー線維が存在する。
4. マラッセの上皮遺残を有する。
5. 咬合圧の緩衝作用を行う。

歯根膜は歯小嚢由来であるから1が誤りである。でも、僕が言語聴覚士の学校に行っていたら、歯の発生なんていちいち覚えてられないだろう。

【第11回言語聴覚士国家試験:午後16】エナメル上皮腫について正しいのはどれか。
1. 歯髄細胞から発生する。
2. 組織はエナメル器に類似している。
3. 上顎の大臼歯部に好発する。
4. エックス線所見で不透過像を示す。
5. 増大すると歯肉に潰瘍を形成する。

これも、エナメル上皮腫の組織像はエナメル器に類似していることを知っていれば解ける問題ではあるが、やっぱり他の選択肢から優しさを感じない。

美容師国家試験でも出ている

医療系ではないが、美容師の国家試験にも、常識レベルではあるものの、頭頸部の解剖が問われている。歯学部生で1問でも間違えた人は留年を覚悟しなければならないだろう。

【第32回美容師国家試験:22】顔面筋とその働きに関する次の組合せのうち、誤っているものはどれか。 
1. 眼輪筋 ─── 目を閉じる
2. 笑筋 ─── 口角を外方に引きえくぼをつくる
3. 前頭筋 ─── 額にしわをつくる
4. 口輪筋 ─── 唇を開く
【第29回美容師国家試験:23】次の筋肉のうち、顔面にあるものはどれか。 
1. 大胸筋
2. 三角筋
3. 頬筋
4. 広背筋
【第27回美容師国家試験:24】次のうち、唾液腺でないものはどれか。 
1. 耳下腺
2. 舌下腺
3. 顎下腺
4. 扁桃腺
【第26回美容師国家試験:21】次の部位のうち、左右一対となっているものはどれか。 
1. 人中
2. 口角
3. 上唇
4. オトガイ唇溝

言うまでもないが、答えは上から4、3、4、2である。

意外と面白い関連国試問題の発掘

他分野の国家試験問題を解いていると、なかなか面白い発見がある。昔と比べて歯科関連の出題が多くなっていたり、歯科医療者から見たら常識レベルの問題が出題されていたり、明らかに誤っているような問題があったりと、調べる甲斐がある。調べてみて、もし面白い問題があったら教えて欲しいところである。

歯科医師国家試験グループに参加

注)本記事は、2016年3月10日に別メディアで公開されていた記事を再編集・再掲したものです。