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過酷な労働環境が常態化する歯科技工業界にメスを入れ、改革に挑む歯科技工所があります。株式会社ZOO LABOが見据える、歯科技工の未来とは。急成長の舞台裏を、代表取締役・岡田和典氏に聴きました。

岡田 和典(おかだ・かずのり)
1973年栃木県生まれ。金沢工業大学大学院客員教授。名古屋大学大学院を修了後、三菱商事株式会社、外資系コンサルティングファームを経て、2002年に岡田ビジネスディベロップメンツを創業。2013年には株式会社ZOO LABO代
表取締役に就任し、歯科技工業界のイメージ変革に取り組む。

課題が山積する歯科技工業界へ

ーーコンサルティングの世界から、なぜ歯科業界に?

「歯医者はコンビニより多いと言うけど、なんでみんな羽振りが良いんだろう」という素朴な疑問がきっかけです。歯科業界を調べていくうちに、歯科技工業界は特に課題が多いということがわかってきた。

特に歯科技工士不足は深刻です。歯科技工士国家試験の合格者数は、ここ10年で半分以上も落ち込んでいる。歯科医師は全国に10万人いますが、歯科技工士は3万人。歯科医師3人に対して歯科技工士が1人という、技工物の作り手不足は明らかなのです。

さらに、高齢化も深刻な課題です。50歳を超えている歯科技工士は全体の半数を占めており、今後さらに状況は悪化していくでしょう。

ーーなり手の減少と高齢化が急速に進行している印象です。

なにより問題なのは、歯科技工所が多すぎることです。歯科技工士が減っているなかで、実は歯科技工所は増えている。増えていると言っても組織化されている技工所はほとんど無く、90%が個人事業主か3名未満の規模です。

近年のデジタル化の波で、こうした小規模な技工所は設備投資が追いていません。こうなると余計に労働環境が悪化する、という負のスパイラルに陥っています。

「夕方以降は電話に出ない」常識破りの経営手法

ーー過酷な環境で働く歯科技工士は多いです。

歯科技工士の労働環境は、今でも決して良いとは言えません。繁忙期は徹夜せざるを得ない状況だったり、サービス残業が常態化していたり。

歯科技工所を経営する上で「若手の歯科技工士を集める」ことが重要だったので、働きやすい環境作りをすれば人材は集まると思いました。

一般的な技工でも利益が出て、スタッフが定時で帰れる仕組み。残業がある場合はきっちり残業代が出て、週休2日で、17時30分以降は電話に出ない。

ーー「夕方以降は電話に出ない」のは歯科医院から評判悪かったのでは。

歯科医院は夜まで診療しているので、初期の頃はクレームがバンバン入ってました。時には罵倒されることもありましたが、そうした汚れ役を率先してやらなければ、スタッフを定時退社させることは無理だと割り切っていました。

信念を持って地道なことを3年〜4年間続けていたら、徐々に認めてくれる歯科医師も出てくるんです。「君みたいな人を待っていた」と言われた時は、努力が報われた気がして嬉しかったですね。

ZOOLABO岡田和典氏(歯科技工士・歯科技工所)

歯科技工士はチェアサイドに出るべき

ーーどういった歯科技工士が、社会に求められているのでしょうか。

歯科技工物は、工業製品のように規格通りに作れば良いというものではありません。指示書通りに製作しても、歯科医師に認められないといけないし、患者さんが「なんか合わない」と言ったらその時点で失敗なわけで。

工業製品とは「品質」の定義が違います。「技工物の品質ってなんだろう」と考えることが重要で、その基準は歯科医師によっても、患者さんによっても違う。

技工学校を主席で卒業したり、コンテストで優勝したから品質が高いかというと、そうでもない。高品質な技工物が100点だとしたら、最初に出来上がってくるのは70点です。

ーー残りの30点は、どのように埋めていくのですか。

技工所に引きこもって、指示書だけを見ていたのでは100点は目指せません。最後の30点は、歯科技工士のコミュニケーション能力で埋めていきます。

歯科技工士は、もっとチェアサイドに出ていくべきだと思っています。歯科技工物の品質とは、技術力ではなく「患者さんが喜ぶかどうか」ということ。

そのために、歯科技工士も実際にチェアサイドを訪れて、歯科医師とプロ対プロの関係で100点の技工物を目指していくべきだと思いますね。

ZOO LABOが見据える未来の景色

ーー伊藤忠商事から出資を受けたり、上場を目指すと公言しています。

上場を目指す理由は単純で、歯科技工士という職業を社会にもっと知って欲しいんです。多くの歯科技工士が劣悪な環境で仕事をしている現状がある。歯科技工士の地位を向上させ、子どもたちがこぞって「歯科技工士になりたい」と言う未来を作りたい。

日本の歯科医療のレベルは世界でも通用すると言われます。ZOO LABOを起点として、歯科業界全体をあるべき方向に進めていきたいと考えています。

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