歯科医師情報サイト・SNS

美容業界×AR(拡張現実)で起きつつある変化

最近化粧品売り場でよく見かけるメイクアップミラー。ミラーの前に顔をかざすと、ブランドのリップやチーク、アイメイクなどが自分の顔に彩られる。イヴ・サンローランなどの有名ブランドで続々と取り入れられている(画像は阪急うめだ本店)。

歯科スタートアップ

これが、噂のAR(拡張現実)技術だ。VR・MRと混合されやすいため補足すると、まずVRは、コンピューターによって作られた仮想的な世界を、あたかも現実世界のように体感できる技術(仮想現実)だ。

それに対し、コンピューターを利用して、現実の風景に情報を重ね合わせて表示する技術がAR。そのARを発展させ仮想と現実の融合を図った技術がMR(複合現実)である。

今回は、美容界で賑わっているAR技術にスポットを当て、歯科へのヒントを探る。

美容界で広まるAR体験

美容業界でのAR活用を加速させているのが、You canメイクの「コンサルテーション・モード」を手がけるPERFECT(注1)。高度な顔認識技術とAI技術を搭載し、世界で数々の受賞歴をもつ。

現在、YSL、CLINIQUE、JILL STUART、SUQQE、CFFRER D’ORなどのブランド商品の体験が可能だ。店頭でのカウンセリング時間の短縮や顧客満足度の向上などを目的として提供されている。

直接的な購買キッカケに繋がるものであるかという点においてはまだ議論の余地が残るものの、こうしたプロダクトにユーザー側とメーカー側の両者から需要拡大の動きがあるのは事実である。

また、SK-Ⅱは、Googleの最先端AR技術を用いた肌測定が可能のポップアップストアイベントを2018年11月26日〜2019年1月24日の期間で開催していた(注2)。近年、美容界ではARを用いた体験型訴求の積極的な導入が目立つ。

なぜいま「AR」なのか?

実は、メイクアップARはそこまで新しいわけではない。大人気スマホアプリ『SNOW』などでも用いられてきた。ではなぜ、今リアルの場でAR技術の積極的導入が進んでいるのだろうか。

そこには、消費者の購買特性の変化が隠されている。モノが溢れる中で、消費者はモノをあまり買わなくなってきていると言われている。その中で、経済産業省のデータによると、「自分に合っているものかどうか」が購買決定の重要指標になることが言われている(注3)。

つまり、消費者が心地の良い購買に至るには、テクノロジーの客観指標によるパーソナライズ化と人(プロフェッショナル)とのイメージ共有による後押しが鍵となる。その文脈でARは現代ニーズに即して役割を果たせる可能性が大きい。

歯科にも存在するARスタートアップ

一方、歯科でもARを用いた歯科スタートアップは存在している。有名なものだと、Ivoclar Vivadentに買収されたスイスの『Kapanu』だ。大掛かりな歯科治療や再建手術を受ける患者に対し治療後のイメージを患者とドクターが共有できるソフトウェアである。

隣接歯の近さや形状などの変更がその場で表示される。患者は仮想ミラーでプレビューを行い最終決定したモデルは義歯製造のために送られる。2016年の世界最大の国際歯科展示会で大きな話題をよんだようだ(注4)。

目的はテクノロジーの普及ではない

忘れてはならないのが、何の目的・理由があってのテクノロジーかという点である。美容業界では、「自分にあったもの」とその理由を消費者は求めていて、そこにARが手段として用いられていることが読み取れた。

歯科では、双方向的でなく一方的なドクターによる説明の後に治療が進行していることがまだ多く、患者は分からないことが多いため受け身になりがちだ。

そこには患者とドクターの心の距離が存在しており、ドクター側もその距離を縮める努力に時間を割くほど暇ではないのが現実としてある。

そこにARのように効率的に患者のゴールイメージを共有しながらコミュニケーションが取れるツールが存在すると、お互いの認識の差を縮めることができる。

医療業界は他産業とは異なり命を授かっているため、一概に全てを比較すべきではない。イメージの期待値を上げすぎても、それは患者のために良くないこともある。

ただ、現代の生活者は購入時に「自分にあったもの」を求めており、その根拠の部分が心地の良い体験かどうかによって、まず第一歩目の満足度を左右することは抑えておく必要がある。

歯科においても、AR技術を始め、様々なテクノロジーによって患者とドクターのコミュニケーション部分も改善されていけば、日本の歯科も更に発展していくことが予測される。

参考文献

歯科医師情報サイト・SNS