日常臨床に役立つ知識やスキルを、各分野のスペシャリストから学ぶスタディグループ「倶楽部PTC」。今回は、倶楽部PTC「新春特別講演会」から、総義歯臨床のスペシャリストである松丸悠一先生の「失敗しない総義歯臨床」と題したセミナーの一部をご紹介します。松丸先生の1Dアカウントはこちらから

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松丸 悠一(まつまる・ゆういち)歯科医師・歯学博士。1980年東京都生まれ。2005年日本大学松戸歯学部卒業、2010年同大学大学院(総義歯学)修了。エビデンスに基づいた総義歯治療を得意とし、日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座兼任講師も務める。

総義歯臨床にコミットする

大学を卒業後、注力したのは総義歯の研究でした。患者さんの実際のデータを取って、大学院2年の秋から総義歯治療に関する研究をしていました。その研究時代が、今の私の総義歯臨床の土台になっています。

大学院を修了した後に、総義歯の治療に特化した歯科医師として大きく舵を切りました。総義歯臨床をしながら、フリーランスとしてエビデンスに基づいた総義歯研究のアウトプットをしています。

松丸悠一が語る失敗しない総義歯臨床

総義歯治療は患者満足度にドリブンされる

総義歯治療は、大局的な設計を持たなければ失敗します。「こんな形にフィニッシュしよう」というマクロな視点から考えていくことが重要です。

気を付けるべきは、患者さんの高い満足度。義歯のような可撤性装置は、患者さんが日常生活のなかで外せてしまうという点で特徴的です。術者側が適切なアプローチをしていたとしても、患者さんが外せば治療は中断する。

義歯のクオリティよりも、患者さんの納得が優先されるということが、現実として起こります。だから私は、患者さんとしつこいくらいコミュニケーションを取るようにしています。

コストをかけるべきは「術者患者関係」

総義歯治療に対する患者さんの満足度に最も関連するのは、術者患者関係の対人評価であるという論文があります。患者さんにどう思われるかだけでなく、私たち歯科医師が患者さんに対してスッキリとした気持ちで関わることが、総義歯治療を成功に導きます。

特に重要なのは、患者さん自らが選択するということ。審美治療の満足度は、実際に得られる審美性よりも、患者さん自身が審美的な選択に関わっていることの方が影響しているというデータもあります。患者満足度を高めるためには、常に選択肢を与えながら患者さんと関わることが重要です。

「顎間関係」と「順応・適応」が満足度に影響する

患者満足度に影響を与えている要素を調べた研究があります。もちろん色々なファクターがありますが、ひとつ大きいのは「顎間関係」です。顎間関係には、下顎義歯の維持・安定、下顎顎堤の条件の2つが欠かせません。

もうひとつは、「順応・適応」です。10年、20年と義歯を長く使うと不満が無くなり、順応して使えるようになります。義歯を長く使ってもらうことが、患者満足度における重要なファクターです。

松丸悠一が語る失敗しない総義歯臨床

「義歯を貸す」というコンセプト

治療用義歯は、義歯の受け入れが難しい患者さんに対するマネジメントとして行うことが私の基本的な考え方です。「レンドデンチャー」というコンセプトで、治療用義歯は「仮」「貸し出し用」の義歯であるということを、患者さんに対して明確にします。

治療用義歯は、時間を使って顎間関係の安定を確認していくことができます。「仮の」義歯であるということを患者さんに理解させ、調整・改良を行う余地を残すことができる。

それは術者患者関係にもいい影響を与えますし、時間軸を使い、患者さんも調整を頑張ろうとしてくれるので、満足度も向上します。

日常臨床に活かせる総義歯治療のコツ

総義歯治療を失敗しないためには、患者さんに納得してもらい、満足度を高めていくことが近道です。

患者満足度のためには、「顎間関係」と「順応・適応」が重要で、そうしたマクロな「術者患者関係」「顎間関係」「順応・適応」というマクロな視点を持ちながら、ミクロなことを決めていくことがコツである、ということです。

次回は修復治療セミナー(青島徹児先生)

倶楽部PTCの次回のセミナーは、 こちらのページ からお申込みください。青島徹児先生を講師として、修復治療について取り上げられるそうです。