歯科医師、歯科衛生士向けSNS「1D」

黄地健仁(おうち・たけひと)歯科医師・博士(医学)。2011年東京歯科大学歯学部卒業後、慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室入局。2017年慶應義塾大学医学部大学院博士課程卒業。慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室助教を経て、2019年よりハーバード歯科医学校、ハーバード幹細胞研究所研究員として勤務。

なぜ歯科医師国家試験には基礎系問題が多いのか

「どうしてこれほどまでに基礎系問題が多いのか?」「本当に必要なのだろうか?」と、歯科医師国家試験に向けた勉強の際によく感じた。

患者最優先である医療において、臨床系に関する知識が必要なのは言うまでもないが、基礎系が重要な理由がよくわからないまま大学生時代が終わった。

今思い返しても、いわゆる「語呂」で無理やり覚えたのは明らかに基礎系が多かった。それはすなわち「勉強しづらい」からである。

黄地健仁先生(ハーバード歯科医学校・ハーバード幹細胞研究所)

筆者が学生時代に使用していたノート

歯科臨床には基礎医学の知識が欠かせない

治療介入が必要な歯科疾患は、基本的に金属やレジン、チタンインプラントなどの人工材料により修復治療や補綴治療が施されてきた歴史的背景がある。

また、GTR法やエナメルマトリックスタンパクなどによる歯周組織再生療法、さらには結合組織移植術や自家骨移植術などの応用により、治療の選択肢が大きく広がった。

「いかにしてそれらが歯や口腔組織と相互作用し、治癒機転がはたらくのか?」。そこには歯科理工学や発生生物学、組織学、病理学、免疫学などの幅広い基礎分野の知識が極めて重要となる。

さらに歯の切削や補綴治療においては口腔解剖学が、口腔外科や歯周外科治療における切開線のデザインには脈管・神経解剖学に関する十分な知識が必要となる。

「そもそもなぜ患者は、治療介入が必要になるまでの疾患の進行に至ったのか?」。そこには患者の生活習慣の把握に加え、原因となり得る、う蝕病原菌や歯周病原菌などを理解する上で微生物学の概念が必要である。

基礎医学に加えコミュニケーション学も重要

それらの基礎的な知識をもとに、急性期の疾患においては迅速かつ着実な対応が必須となる。

悪性腫瘍では、一刻を争う時間軸の中で適切な対応が要求される。

また、現代の歯科医療においては全身疾患の把握は必須であり、医学的な観点からも問診を進めていく必要性がある。

もちろんその過程において不安事項がある場合は、大学病院などの専門医療機関への紹介が必要となる。

こういった中では、基礎系の知識に加えてコミュニケーション学や診断学が欠かせなくなっている。

いかにして基礎医学のエビデンスを取るか

臨床の現場や勉強会に参加すると、基礎的なエビデンスに関しては「あの先輩がこう言っていた」「ある著名な先生がこう言っていた」とよく耳にする。

決められた時間の中で効率良く確実に治療を行うには、十分な知識と技術がシンクロナイズしなければならないが、「何を持って十分な知識やエビデンスと言えるのか?」考える様になった。

「あの論文に書いてあった」と聞く事もあった。しかしながら、それでもなお他の人の意見やデータの引用であると感じた。

今後高まっていく基礎医学の重要性

これまでに予想もしなかった新しい材料や新しい技術が導入され、さらにはこれまでに出会った事のない全身疾患を有した患者が受診する事が今後予想される。

学生時代の学びの多くを締めた基礎系分野を、歯科医師になった後「確か、あそこにこう書いてあった」「多分、こうだと思う」と済ませるのではなく、歯科医師自らがその指標となる基礎データを生み出し、歯科界のみならず医学界、さらには社会にアウトプットしなければいけない時代が来ると感じている。

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