早産(妊娠37週未満)や低体重児出産(2,500g未満)は、正常な出産と比べて死亡率が高く、本人や家族の精神的な負担も大きい。

出産直前は、胎盤などにおける女性ホルモンバランスの変化や血中の炎症性サイトカインの増加によって、早産・低体重児出産に至るというメカニズムが明らかになっている。

一方、歯周病によって血中の炎症性サイトカインが増加し、治療によりサイトカイン濃度を低下できることが知られている。

このため、歯周治療により早産・低体重児出産をどれほどコントロールできるかについて、歯科業界内外で注目が集まっている。

歯周病は本当に早産・低体重児出産を増加させるのか

結論から言えば、歯周病に罹患した妊婦は、早産・低体重児出産のリスクが増加する

総数10,000名以上のメタアナリシスによれば、歯周病と早産・低体重児の間には有意な相関が報告されており、歯周病は独立した早産・低体重児出産のリスクファクターであると結論付けられている。

ただ、歯周病の診断基準や交絡因子の取り扱いについて、それぞれの論文間でバラつきが大きいことも指摘されている。

歯周病がどのようなメカニズムで早産・低体重児出産と関連しているのかについては、歯肉溝滲出液中のIL-1β、PGE2、TNF-αが早産・低体重児出産と有意に相関していることが明らかにされている。

だが、メカニズムを明確に説明する結論にはたどり着いていないのが現状のようだ。

歯周治療をしても早産・低体重児出産は抑制されない

歯周病が早産・低体重児出産と関連していることはわかったが、歯周治療によってそれを予防できるのだろうか。

結論から述べてしまえば、歯周治療をしても早産・低体重児出産は抑制できない

2013年に行われたアメリカ歯周病学会(AAP)と欧州歯周病連合(EFP)の合同カンファレンスでも、歯周治療をしても早産・低体重児出産は抑制されないため、積極的な治療は推奨されないと結論付けられている。

なかには早産のリスクが高く歯肉炎がある妊婦にのみ、SRPによってリスクが下がるという研究や、SRPではなくクロルヘキシジン洗口が重要と示されている研究もある。

疫学的に歯周病と早産・低体重児出産の関連のエビデンスが示されているにも関わらず、歯周治療が結果にアウトプットされていない。今後は、この矛盾を説明する研究が必要になると思われる。

また、歯周病は慢性疾患であり、長期的な介入が必要だ。転じて妊娠は短期的な介入を前提としているため、妊娠前からの長期的な歯周治療との関連を明らかにすることが必要かもしれない。

妊婦への歯周治療は安全である

妊婦に対する歯周治療は、複数の研究によって安全性が示されている

治療中の妊婦に対する麻酔の使用についても、無麻酔・表面麻酔・局所麻酔いずれも副作用の発生率に有意な差は認められなかった

本記事のまとめ

最後に、本記事で解説した歯周病と早産・低体重児出産の関係についてまとめておこう。

  • 歯周病によって、早産・低体重児出産のリスクは増加する
  • 妊婦への歯周治療は安全であり、口腔の健康維持のために重要である
  • 歯周治療で早産・低体重児出産を抑制できるというエビデンスは乏しい
  • 妊婦に早産・低体重児出産の予防を目的とした歯周治療は推奨されない

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